さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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糸が切れたから、もうどこにも行けないね。



ぷつり

何となく、プツッと糸が切れたのを自覚した。

 

(…あ〜)

 

自覚しちゃったから、もう何もやる気が起きなくて。

「なんかしなくちゃなぁ」と思うものの、本来叱るはずの家族が「ゆっくりすればいい」と甘やかしてきて。

 

(料理すらも、取り上げられちゃった…)

 

せめて料理でも、と手伝おうとすれば布団に簀巻きにされては下のきょうだいたちと添い寝。

 

(……はぁ)

 

なんだか、もう。

「全部が面倒くせぇ……」と、思ってしまったら最後だった。

僕は、それからずっと布団に籠もった。

ご飯は下のきょうだいたちが運んできてくれるし、欲しいものがあれば買ってきてくれるという徹底ぶり。

そんな過保護な家族たちに甘えて、僕はダラダラゴロゴロした。

そして、そんな僕を見てみんなは嬉しそうに笑うのだ。

「よかった」って。

 

「……」

 

本来受けるはずだったトレセン学園の試験も蹴って。

せっかくスカウトしてくれたトレーナーさんにも会わず。

僕は、今。

 

(……何やってんだろ)

 

こんなはずじゃなかったのに。

こんなはずじゃなかったのに。

…こんなはずじゃ、なかったのに?

 

「……」

 

なんでこうなったんだろうなぁ?と自問自答しても答えは出ない。

ただ、ひとつ言えることは。

もう何もしたくないし、考えたくないということだけだ。

 

(……あぁ)

 

なんかもう全部が面倒臭い。

元から細いのに運動しなくなったからもっと枯れ枝のようになった体。

骨と皮だけになったような、死人のような手足。

 

(……)

 

鏡に映る自分の顔は、まるで。

 

「……」

 

ふと、思い立って引き出しから鋏を取り出す。

そして、その刃を眼前にして。

 

(───────)

 

なんてことを考えた瞬間だった。

 

「……何やってんだ?」

 

背後から声をかけられて振り返る。

そこには怪訝そうな顔をした母がいた。

 

(あぁ……そっか)

 

もうバレちゃったのか……と思いながら僕は答える。

 

「別に」

 

にへら、と笑った。

 

 

唐突に糸が切れてしまったその子を、家族はたいそう慈しんだ。

なにせその子には痛々しいまでの『英雄』としての生が約束されていたので、自分からその道を閉ざしたとなれば…諸手を挙げて歓迎する以外の選択肢がなかったのだ。

どこに自分の家族が傷つくだろう未来を喜ぶ家族がいる?

「ゆっくりすればいい」と甘やかすのも当然だ。

だって、ようやく自分たちの手元に帰ってきたのだから。

これでもうこの子は傷つかない。

もう、苦しむことはないのだと。

 

「いい子、いい子…」

「…」

 

糸はもう、結び直さない。

 





僕:
シルバーバレット。
布団虫になっている。
元から細いのに筋力もないなったしてるからマジで紙みたいというか枯れ枝というか。
何もやる気が起きない。
でも家族はそれをよしとしているようで…?
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