それでも、彼女は笑うだけ。
「は…どこが?」
『可愛い』と言われた。
家族に言われるのならばまだ分かる。
身内の贔屓目とかもあるだろうし。
だが、友人から可愛いと言われても心底からは信じられない。
むしろバカにされているようにしか聞こえない。
「どこが」
「そういうところが」
「……はぁ?」
「ほら、そういうところ」
「意味が分からないんだけど」
「…分からなくていいよ」
そう言って、彼女──カツラギエースは笑った。
その笑顔は今まで見た彼女の表情の中で、一番自然に見えた。
まるで、好きな相手に向けるような……そんな笑顔。
(あれ……?)
ふと、その笑顔を見て胸がチクリと痛んだ。
どうして?と首を傾げるのものの答えらしい答えは出ず、僕はそれを気のせいだと頭の隅に追いやった。
「ほら、早く行こうぜ」
「あ、うん……」
彼女に促されて、私は慌てて彼女の後を追いかけるのだった。
それからというものの、彼女とは頻繁に話すようになった。
きっかけは些細なことだ。
たまたま同じ模擬レースに出走したから少し話したとかその程度だったと思う。
けれど、それがきっかけとなって僕たちは急速に距離を縮めていった。
(……あれ?)
そんな僕たちを見てなのか、周りも彼女に負けず劣らず僕に積極的に話しかけてくるようになり。
もはやてんてこ舞いでひとりの時間なんてあってないようなもの。
ひとり話が終わったら、ひと息つく間もないまま話しかけられるのも…もう慣れてしまった。
「大丈夫か?シルバー」
「あ、うん…」
話しすぎて流石にくったりとしていると差し出されるお茶。
購買で買ってからここまで来たのか、汗をかいているペットボトルはそれでもまだ冷たい。
「ありがとう」
「どういたしまして」
キャップを外し、お茶を流し込む。
火照った体に冷たいお茶が染み渡り、思わず声が漏れた。
そんな僕を見てカツラギエースは笑う。
「ははっ……シルバーもそういう声出すんだな」
「そりゃあ僕だって人間だからね……」
「…そりゃそうだな」
(あれ?)
少し、彼女の笑顔に違和感を覚える。
今まで見てきた笑顔と何かが違うような……違和感。
(何が違うんだろう……)
じっと彼女の顔を見て、…すぐに僕は顔を赤くする。
(なんて顔してるんだ!)
「…ん?どうかしたか?」
「な、何でもない!」
「……そうか」
くつくつと、からかうような悪い笑い声。
それに顔を赤くしたまま、ジリジリと後ずされば、トンと壁際まで追い詰められて。
「そんな、可愛い顔するなよ…なぁ?」
「ぅ、ううう、うるせ〜!!」
【世界制覇の大エース】:
カツラギエース。
ワルいウマ娘。
何だかんだ一番イケメンだと思う。
ほら、こう…少女漫画の好きな子相手にからかう感じ。
自分の顔が良いことを知っている上で…ってのもありそう。
…ワルいウマ娘だな〜!!