さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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おねがいだから。



ずっと、そばにいて

みゃあみゃあと響く泣き声に、ぽたりと涙を零したのはさて何故だったか。

歓喜か、それとも…。

 

「…」

 

小さな我が子を抱き締める。

赤子であっても、同年代よりずっとずっと小さい我が子。

やっとこさ保育器から出られるようになり、病院から帰ってきてもその小ささは思わず恐れるほどに。

けれど、それでも。

 

「おかえり」

 

腕の中の温もりに、やっと帰(・)っ(・)て(・)き(・)た(・)と安堵する。

 

「……ぅ?きゃっきゃっ!」

 

小さく答えた我が子の声を耳にして、もう一度抱き締める腕に力を込めた。

 

*

 

日々、我が子は強くなっていく。

伸ばした指を掴む強さだとか、ハイハイの速さだとか。

食べる量は少ないが、好き嫌いはなく。

 

「はい、あーん」

「……ぅぁ」

 

小さく開いた口に食べ物を運べば、小さな口でゆっくりと咀嚼する。

 

「美味いか?」

「んま!」

 

嬉しそうに笑って頷く我が子に笑い返しながら、もう一口とスプーンを差し出す。

ぱくりとまた口に入れてもぐもぐと食べ始めた我が子の頭を撫でれば、きょとんとした顔がこちらを見上げた。

 

「?ぱぁぱもたべゆ?」

「俺はいい」

 

だってそうしたら、「ぱぁぱがたべてゆから」なんて言って食べなくなるだろう。

我が子のことだ、よく分かっている。

親としてはもう少し食べてもらいたいものだが、無理強いはしたくない。

 

「それより、ほら」

「ん!」

 

スプーンを差し出せばまたぱくりと食いつく我が子に笑みが零れる。

もぐもぐと口を動かす様子を眺めながら、ぼんやりと考える。

……このまま、何もなければいいのだが。

 

とかいう思いとは裏腹に、月日は流れていく。

少しずつ言葉を覚え始めた我が子は話すのが楽しいのか、よく喋っている。

最近は歌を歌うのもお気に入りらしい。

 

「ぱぁぱ!」

「ん」

「らいちゅき!」

「おう…」

「ぱぁぱ〜!」

 

ぽて、と胡座をかく自分の元にやって来た我が子を抱き上げる。

…ぎゅう。

 

「ぱぁぱ?」

「あいしてる」

「…?」

 

だから。

 

(どこにも)

 

*

 

ウチの家族はたいがい過保護だが、中でも父が一等に過保護だった。

普通に学校に行く時でも毎日の送り迎えを欠かさないし、なんなら携帯を持たされるようになったら休み時間ごとに連絡がくる。

 

「父さん」

「ん?どうした?」

 

もう大きくなったので、毎日来なくていいのになぁと思わなくもないが。

下にたくさんきょうだいがいる中で、父を独占できるのはこの時だけと考えるとどうしても惜しくなり。

 

「…いや、なんでもない」

「そうか?」

「うん。…あ、帰りにさジュース買ってよ」

「…へーへー」

「やった!」





家族みんな同じこと思ってるけど、その中でもその想いがいちばん強そうだなって。
だって初めての子で成長しても我が子の中でいちばん小さい子だし…。
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