外堀埋め。
ファンは大事にしなければならない。
そのため望まれるがままに、俗に言う『配信』をしているグローリーゴアはそれまで当たり障りない、「次のレースも頑張ります」だとか「今日はこういうトレーニングして…」だとかの、競走バとしては理想的だけれど面白みのない内容しか話していなかった。
だが、
『どうも、こんにちは。何か知らないけど呼び出されたサンデースクラッパです』
ある日突然現れたそのウマ-サンデースクラッパは、グローリーゴアの年相応の姿を視聴者に見せてくれた。
…まぁ、どう見ても同棲してる風にしか見えなくて初期の方は「これいいのか」とファンの間で物議を醸したりもしたが、今ではすっかり馴染んでいる。
『今日はですね、
『なッ!?』
グローリーゴアの発言に思わず声を上げるサンデースクラッパ。
『そっ、そんなことしてない! 勝手に言わないでください!』
『えー? なんでー?』
『なんでもなにも恥ずかしいからです!』
『いつも言ってるじゃないか』
『知らねぇ!!』
そんな言い合いを画面越しにしている内にも配信は進んでいく。
『まずね、ご飯美味しいところ』
『お、おおう…?』
『あれ?何かアブナイこと言われると思った?』
『思ってない!思ってない思ってない!!!!』
『じゃあ次ね。僕がちょっとでも弱音吐くと優しく励ましてくれるところ』
『あー、はいはいはい! もう分かりましたから!』
『えー?まだあるのにー?』
そう言ってグローリーゴアは画面の中で少し不満げに頰を膨らませる。
その仕草があまりにも自然だったものだから、コメント欄も「てぇてぇ」で埋まっていく。
しかしサンデースクラッパにはそれが気に入らなかったらしく……。
『……ばか』
『……(にこにこ)』
『ばか』
『(にこにこ)』
『……ばーか!』
『(にこにこ)』
『……もう知らないです』
そんなやり取りの後、サンデースクラッパはそっぽを向いてしまう。
……が、しかし、その耳が赤くなっているのをグローリーゴアは決して見逃さない。
(わ、ァ……!)
その時のグローリーゴアの顔と、目と言ったら!
画面越しに見ているファンですら思わずゾッとしてしまうほどに、恍惚と蕩けきった表情を浮かべていた。
(……これだからやめられないんだよなぁ)
画面の中は今日も騒がしい。
その様子をコメディーと見るか、ホラーと見るかは人それぞれではあるが。
「幸せなら、OKだよね!」
ヤベェ〜配信してて欲しいという思いからのヤツ。
クソデカ感情グローリーゴアと何にも気づかないサンデースクラッパ。
たぶんサンデースクラッパはエゴサとかもしないからきっと気づくことはありません♡