さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

761 / 1416

狂わせてしまう"魔"の話。



魔物は誰のもの?

それは、刃物のようだった。

よくよく研がれた、欠けのひとつもない美しい刃物。

触れれば誰だって傷つけ、痛みを与える類の、そんな。

抜き身の刃物。

…だが、その刃文に誰もが魅入られた。

ソレが自分を傷つけると分かっていようとも。

その痛さを理解していても、どうしてもどうしても…欲しくなってしまう。

 

「───────」

 

嗚呼、まさしく『魔剣』や『妖刀』といったモノのような。

抜き身の刃のようなそのウマ()()を……誰もが欲したのだ。

 

 

生まれながらにして、他人を惹き付けてしまう素養を持つ家に生まれてしまったが故に、親しい人なぞ作れやしなかった。

なにせ、仲良くなれば行き着く先は誘拐やらそういった種類の"所有"に至るのだから。

『自由』を何よりも愛する家に生まれたが最後、それは自分にも受け継がれているようで一度、度を過ぎた束縛をされればスパッと縁を切ってしまうぐらいには、その素養は根深い。

『自由』を尊ぶが故に、束縛を嫌う。

それは裏を返せば、自分は誰にも縛られないということでもあるが。

だからこそ、そんな家に生まれてしまったことをひた隠し、何とか普通に生きようと努力するのも…そうおかしなことではない、はずだ。

面倒事はない方がいい。

普通に、幸福に生きていけるのならそちらの方が余程いい…はず?

 

「……」

 

だが。

自分がどう努力しようにも、あちらからやって来られてしまうともうどうしようもない。

侃侃諤諤と自分を取り合う友人たちの押しも押されぬ争い。

それは、本当に疲れるもので……だからこそ、自分はそんな友人たちから距離を置き、こうして一人になれる場所を求めたのだ。

 

「……」

 

が、それももう終わり。

終わらぬ議論に業を煮やした友人たちが「これが一番平等だ」とレースで勝敗を決し、ひとりが『勝者』となったのならもう自分の元にはその一人以外誰も来れまい。

大体の誰もが羨むものを手に入れたことを考えると、「嬉しい」と思うのが当然だろうが……それでもやはり寂寥感は拭えないものだ。

 

「……はぁ」

 

だがまあ、これも運命なのだろうと諦めることにする。

…もうどうにでもな〜れ☆

 

 

気分はかの選定の剣を引き抜いた騎士王か。

 

「♪」

 

自分の腕の中にいる小柄なウマは好き勝手にされるばかり。

柔らかなタオルと最高級のボディーソープで汚れを余すところなく落とされ、水気を拭き取られたその体は、まさに黄金の輝き。

……しかしまあ、こうしてみると本当に小さいな。

自分の胸元ぐらいまでしか背丈がないその体軀は、よくもまあこんな小さな体であんな走りをしたものだと感心してしまうほど。

しかし、

 

「…♪」





己が"魔"であることを分かっているため、他人を狂わせないように遠ざけようとするけど、一度狂った人間がそう簡単に忘れられるわけないんだよなぁ。
一度魅せちゃったからにはもう終わりよ…っていう。
なので諦めて蒐集されてください♡
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。