さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ワケじゃない。



幸せになりたくない、

泥のような安寧。

それが、少し怖いと思った。

『幸せ』であるのだから、抵抗せずに受け入れればいいものを、それまでの人生とやらがそこそこに過酷だったせいか、泥に塗れるような生き方をしてきたせいか、それが怖い。

きっと、それを受け入れてしまえば、自分は弱くなる。

それはダメだ。

今までずっとそうしてきたように、これからもそうしていかなければ生き残れないのだから──!

 

「────」

 

ふと気付くと、マブダチが心配そうにこちらを覗き込んでいた。

 

「バレット……? もう用事終わったけど、…体の具合悪いか?」

「え……?あ、 ああ、大丈夫。少しぼうっとしてただけだから」

 

……何をバカなことを考えているのか。

そんな七面倒臭い考えごとなんてひとりの時にするものだろう。

なに友人に心配をかけているのだ。

 

「……」

「わっ、」

「変なこと、考えすぎんなよ」

「…うん」

 

僕の方が歳上なんだがな、と思わなくもないが、今は素直に頷いておく。

……まったく、このマブダチは妙なところで鋭いから困るな。

 

「それで?用事ってなんだったの?」

「ああ、」

 

少し照れ臭そうに頬を掻くと、友人は言った。

 

 

俗に言う、『幸せ』というものを感じると、俺の友人はひどく居心地の悪そうな顔をする。

まるで自分がそこにいるのが似つかわしくないような、もっと()()()()()()()()()とでも言うような顔をする。

……それが、とても気に入らない。

 

「バレット……?もう用事終わったけど、…体の具合悪いか?」

 

だから俺は、いつものように、そう声をかける。

すると友人は、少し照れ臭そうに頬を搔いてから、あいまいに頷くのだ。

 

──ああ、それでいいんだ。

 

そんな気持ちを込めて頷いてやると、友人はいつも通り安心したように笑う。

その笑みを見ると、俺も安心するのだ。

ああよかったと。

こいつはまだ()()()にいるのだなと。

手首にあった引っ掻き傷も、最近はマシになった。

ひっきりなしに噛んでいた指の皮も、何とか再生してきている。

……本当に、よかった。

 

 

『幸せ』を感じると居心地が悪くなるのだと、いつかある時友人は言った。

それはきっと正しいのだろう。

幸福を素直に受け止めれば受け止めるほど、自分の罪が重く感じるだろうから。

そんな罪悪感を抱えたまま生きるなど、地獄以外の何ものでもなく、またこの友人はその地獄に耐えれてしまうから。

だから、これでいいのだ。

このままでいいのだ。

こいつには罪などないのだから、幸せを素直に享受していればいい。

それができないのなら、俺がその分幸せに──!





僕:
シルバーバレット。
安寧がこわい。
なので無意識に『幸せ』を感じると…したりとか。
でも隠すのが上手いので気づかれることはそうないらしい。
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