さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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たしかに、ヒーローにはなりえるだろうけれど。



遅れてきたヒーローは…?

どれだけ探し続けても"あの人"はおらず。

あのシンボリルドルフが地方のトレセン学園に在籍している生徒まで全て調べあげてソレなのだから、周囲の普通の生徒が諦めるのも…まぁ。

しかし、

 

「……」

 

今度の新入生や、高等部からの外部生のための入試の中で。

 

「……あれ?」

 

"彼女"は、いた。

 

 

"彼女"はとある孤児院で育った。

とはいえ、孤児院と言っても"彼女"含め孤児は二人しかいない孤児院であったが。

10歳ほど年上である彼と共に育った"彼女"が、その彼が中央のトレーナー免許を取ったと同時にトレセン学園を目指したのは偶然なのか、それとも『運命』なのか。

 

「とおるくん」

「ん〜?」

「ごはん、ちゃんと食べてってね?」

「うん」

 

二人が育った孤児院がなくなるから、と始めた二人暮しは、二人で暮らすには少し広い家を抜けばあまり変わらず。

 

「じゃあ、後でね。とおるくん」

 

 

その生徒は、瞬く間にトレセン学園の注目の的になった。

中等部の新入生。

新入生、いや生徒の中でも一二を争うほどに小柄な背は、周囲の生徒に威圧感を与えることはない。

だがその小柄な身体から繰り出されるレースは、見る者を魅了した。

多くのトレーナーたちがスカウトのために動いた時にはもう遅く。

 

「すみません、既に先約がありまして」

 

と申し訳なさそうに断られたらしい。

……だがしかし、それはあくまで表向きの話であり。

実際はと言うと『チームリギル、スピカ等有名チームに所属している生徒直々に"彼女"をスカウトしようとしたが…』という、世間に漏れたら大問題となるような話であった。

 

「……」

 

しかし、"彼女"本人はそんなこと気にせず。

今日も今日とてひとりで。

 

「とおるくん」

 

彼のことだけを想って、走っていた。

他なんてどうでもいい。

彼さえいれば、それでいい。

きっと、それは彼も同じで。

 

「とおるくん」

 

だから、今日も彼女は走る。

 

「……昔よりも、ひどいですね」

 

その姿を見て、誰かが言う。

"彼女"を知る、誰かが言う。

"彼女"に、自分を見てほしかった、誰かが言う。

誰も、"彼女"の目には映らない。

彼以外は、みんな、みんな。

ふたりだけの世界は、ふたりだけで遠に完結してしまっていて。

だから、"彼女"はひとり。

"彼女"の世界は、ずっと、彼だけで構成されている。

 

(きょうは、どうしようかな)

(とおるくんなら何でもよろこびそうだけど)

(ちゃんと栄養素しなきゃ)

(とおるくんが入院とかなったら、いやだし)

(…そろそろ練習おわろ)





僕:
シルバーバレット。
長い現役期間に合わせるために中等部になっちゃった系ウマ娘。
孤児院出身であり、同じ孤児院出身のトレーナーと同居している。
ちなトレーナーが世界とのこと。
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