さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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シルバマスタピース視点のシルバーバレットとの関係性。


*────歓声が、聞こえる

シルバマスタピースは大切な幼なじみとの約束を破った。

 

『待ってるから。

だから今度こそ一緒の舞台で…』

 

そう約束したはずだった。

誰よりも速い幼なじみ。

ひとりきりだったキミに話しかけて、走り去っていった背中を必死で追いかけた。

思えばあの頃から僕はキミに魅せられていたのかもしれない。

 

「や、めるって…」

「…ごめんね」

 

告げたくなかった事実を告げると幼なじみは呆然とし、力なく座り込んだ。

立ち上がらせようとして、でもこんな自分が手を伸ばしていいものかと思って手を引っ込めた。

何も話せず、沈黙ばかりが続く空気に耐えきれなくて逃げ出した。

 

誰よりも速い幼なじみは、その脚の速さと引き換えに脆かった。

そして運も悪かった。だから代わりになりたかった。

あの子の代わりにあの子の強さを証明するのだと、思っていた。

 

「…諦めるって、なに?」

「別にいいだろ。重賞はそれなりに勝ってるし、年齢が年齢だからそろそろ……」

「ふざけたことを言うな!」

 

屈腱炎になった幼なじみの胸ぐらを掴み上げた。

気まずげに目を逸らすあなたのなんと惨めなこと!

僕が憧れたキミはそんな人じゃないだろうと最終的にはウマ乗りになってまで怒鳴り散らした。

逃がしてはいけない。逃がすつもりもなかったが。

 

「わかった、わかったから…!」

 

何とか意見を撤回したキミの顔は赤くなっていて。

何か変なことを言っただろうかと思ったが自分には分からず。

 

「そう言ってくれて嬉しいよ」

「…うん」

「僕もバレットのこと支えられるように免許取ってるから頑張ろうね!」

「は?」

 

なお伝えていなかったが、脚の弱い幼なじみのためにそういった類の免許を引退後取っていた僕である。

 

 

「脚は大丈夫?」

「おう」

 

海外遠征へと進んだ幼なじみにシルバマスタピースは着いていった。

元々陣営は少数精鋭で行くつもりでシルバマスタピースの入る枠はなかったのだが幼なじみが直々にシルバマスタピースの同行を推薦したのだという。

 

「もうお前無しじゃ生きていけないんだよ、僕」

「…そりゃあ嬉しいね」

 

触診しながら相変わらず細い脚だと思う。

どこからあんな速さが出せるのだろうとも。

少しばかり力を入れたら握り潰せてしまいそうな細い脚を丁寧に、丁寧に診察する。

普段ならこそばゆいだのなんだの言って騒がしいのだがもうすぐ本番である今は真剣だ。

 

「…どう?」

「うん、問題はないよ」

「やった」

 

もうそろそろ呼ばれる時間だろうと幼なじみから離れようとすると袖を引かれる。

 

「ほらいつものしてくれよ」

「えぇ…」

「調子出ないんだよ、アレがなくちゃ」

 

ニヤニヤと笑う幼なじみが腕を広げる。

それにゆっくりと抱き着く、いや抱き締めてこう囁く。

 

「…キミはすごいよ」

「うん」

「誰よりも速い」

「当たり前だろ」

「キミが、最強なんだ」

「…あぁ」

 

この遠征が始まってからのルーティーン。

1分ほどそうしてからキミが離れる。

 

「じゃあ、行ってくる」

「うん、行ってらっしゃい」

 

そう言って見送ったキミに、今日も見惚れた。

 




ウマ娘かもしれないしウマ息子かもしれない。

マス太:シルバーバレットに目と脳をやられてるタイプの幼なじみ。
良家の生まれの子。
僕に一目惚れし、普通の優しい良い子を演じながら僕への感情は激重。
僕と同居しており、怪我で引退後は僕のことを献身的にサポートしている。

そのサポートは僕の服の世話、髪型のセット・メイク、食事の世話、脚の世話…etc.など多岐に渡る。
僕本人からも『マス太がいなきゃ生きていけない』と言質を取っている。
この献身は実馬の僕とマス太の厩務員だった"白峰誠"という男性から継承した因子であり、白峰の苗字のとおり白峰透の親類である。
…やっぱり白峰一族は僕に脳をヤラれるのがデフォなんだろな(呆れ顔)
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