幸運値高いからね…。
階段から落ちた、らしい。
とはいえ、自分で誤って落ちたのか、それとも誰かに落とされたのかは不明だという。
なにせ、僕の右腕であり息子であるシロガネハイセイコが見つけた頃には床に血の海広げてぐったりしていたようなので。
「見た目よりはそんなにひどくないんだって!」
包帯を巻かれた頭。
それに心配に心配を重ねる我が子たち。
本当に「そこまでしなくても」って言うことまでしてくれようとするものだから、僕はそれをやんわりと断った。
「でも……」
「大丈夫だよ。痛くないし、それに」
──本当に痛いのは、足の方だから。
そう言おうとして口を噤む。
いくら我が子とはいえど、さすがにこんな情けないことは言えない。
……いや、もう十分みっともないか? そんな僕の葛藤を余所に、シロガネハイセイコは続ける。
「……ということで、父さんの外での仕事は僕たちが肩代わりすることになりました?」
「……?」
「だって、外に出てそうなったんでしょう?」
……?
いや、なんでそうなる?
たしかに僕が怪我したのは外での仕事の折だったけども。
「いや、いやいやいや……」
「え? でも父さん、最近外での仕事煩わしく思ってましたよね?」
「…まぁ、うん」
「……じゃあ、怪我しましたし、いいですよね?」
有無を言わせない問いかけだった。
ベッドにいる僕はもちろん見下ろされる形になって、美形(我が子)の真顔の圧を食らう。
──いや、怖いよ!
そうは言っても、シロガネハイセイコとの攻防は続く。
「で、でも肩代わりすると言っても…!」
「あぁ、…あちらの"仕事"はもちろん今まで通りですよ。それ以外の…父さんの名声とかそういうものが必要な仕事を肩代わりする、というだけの話です」
「……僕以外イヤっていう人もいるのに?」
「それはそれ、これはこれです。…まぁ、僕らも父さんの子どもなので何とかなるでしょう、何とか」
「アバウトだなぁ」
「でも、僕らが父さんの"仕事"を肩代わりするってことは、父さんが休むってことですよね?」
「……まぁ、うん、そうかも?」
「ならいいじゃないですか。……あ、もちろん他の皆さんも協力してくれますよ? だから安心してください!」
──いや、安心できるか!
そんな僕のツッコミは喉まで出かかったけれど、ぐっと飲み込む。
だって、我が子の目がマジだったから。
……え? なんでそんなに真剣なの??
お父さん、分かんないなァ…と、僕は遠い目をしながら天井のシミを数えていた。
「でも父さん、ちゃんと休んでくださいね」
「……はい」
「じゃないと、僕たちが怒られます」
「え?」
「だってそうでしょう? 父さんは仕事しすぎなんですから」
──だから、きちんと休んでください。
そう念を押すように言ってシロガネハイセイコは部屋を出ていった。
……いや、本当になんであんなにも真剣なんだろう?
だが、僕の疑問は解消されることなく、
「……やっぱ足痛いや。あの時くじいてたんかな?先生呼ぼ」
僕:
シルバーバレット。
記憶が喪失してないだけマシ。
階段から落ちた。
その結果、ちょうどいいとワーカーホリック緩和の措置が取られ始める。
でも当の本人は何も分かってないんだなぁ、それが…。