幼なじみだから素直に懐いているかも…?
その相手は、幼き日より年に何度か会う相手だった。
聞くに僕の父親と相手の母親はトレセン学園時代によくしてもらった・よくしていたの間柄であったらしく、その流れで親交があり、また子である僕らも必然的に引き合わされて…という。
「…───?」
相手の名を呼ぶと、ゆるりと撫でられる。
チームが所有していた共同生活のアパートに入るまでは同室として共に暮らしていた間柄でもあるのだが、それにしても。
ぎゅうううと抱き締められ、まるでぬいぐるみのようにされるのは…にんともかんとも。
「ね、岩手はどうだったの?」
そう聞くと「いいところだったよ」とは帰ってくるが、話が続かない。
僕のきょうだいの誰かしらと会ったりしてなかったのかなぁ?と思って聞いた話であったが、どうにも「うん」とか「まあ」とか、そんな返事ばかり。
*
その子と出会ったのは、母に引き合わされたからであった。
母の後輩がその子の父親で、「ゲッ」「なにおう!」みたいな会話をしていたあたり仲がいいのは…いい方だったんだろう、多分。
「だぁれ?」
その子は、髪を長く伸ばした子だった。
いずれ芦毛になるんだろうなぁ、と思ったのをひどく覚えている。
だがそれ以上に印象に残ったのは、まだ黒黒とした髪と対比して目立つ…幽霊のような白い肌と夜のような瞳であった。
掴むだけで折れてしまいそうな華奢な手に触れ、己の名を名乗れば微かにその子も名乗り返してくれて。
「…あっちでおはなししようか」
「…ん」
手を引くまま、その子を連れていったのは互いの親が見え、親の方からも自分たちが視認できるだろうベンチ。
そこで自分たちはポソポソと話をした。
その子の住んでいる土地は同年代がほぼおらず、いずれ通う小学校もバスで行かなくてはいけない(しかもそれで集まっても一クラス分の人数は集まらないとか)場所で、その子は毎日が退屈で仕方がないと。
「だから、おともだちになってくれる?」
そう聞かれたので、僕は頷いた。
別に断る理由もなかったし……何より、その白さはとても綺麗だったものだから。
「じゃあ、これから僕のおにーちゃんね。───ちゃん」
年齢を鑑みると今でも歳不相応な子どもであったと思う。
けれど踏み込んではダメなところには一切踏み込まず、かといって甘えるとなればおずおずとながらも精一杯甘えてくる。
その距離感の取り方は、今にして思えば……長兄として振る舞う練習をしていたのかもしれない。
「───ちゃん」
その子は、僕の事をそう呼んだ。
だから僕も、その子のことを名前で呼ぶことにした。
「なぁに?」と聞き返してくるその子の手を引きながら、僕は言ったんだ。
「これからもずっといっしょにいようね」と。
・
・
・
「───ちゃん?ねぇ、
「…ん。どうしたの?」
「え、い、いや…ぼーっとしてた、から」
「…あぁ。心配かけてごめんね、バレット」
【天命かなえし馬】:
テンメイ。
母の縁で僕と知り合い。
マルゼンスキーと同世代なのでトレセン学園にいてもおかしくないよね、と。
またアルデバランに入る以前の僕と同室だった過去も。
幼い頃からの縁で僕が唯一子どもみたいな感じで甘えられるウマ…かもしれない。