さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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見守っている話。



愛しいが故に、

伴侶が美人すぎるというのも考えものだと思う。

だからおちおち成仏もしていられないというものだ。

 

(なんか…だんだん若返ってねぇか?)

 

こちらを視ることができない愛しい人を、生前は照れやらなんやらで出来なかった超至近距離で見ながら男─ヒカルイマイはそう思考する。

一目惚れしてからも最期の日までも、ずっとずっと美しかったワケではあるが、死んでみると『はてこんなに美しかったか』と首を傾げてしまうくらいには己の生前よりも美貌に磨きがかかっている。

 

(いや、まぁ、嬉しいけども)

 

そりゃもうめちゃくちゃ嬉しいが、なんか悔しい。

 

『お前なぁ……どんだけ俺を惚れさせりゃあ気が済むんだよ』

 

思わずそう呟くと、目の前の美女はゆるりとこちらを見た。

 

「…?」

 

とは言え、俺が見えるわけもなく。

ドキドキと高鳴る胸を押さえながら『……はァ〜』と溜息を吐き出した。

 

 

『あら』

『どうも』

 

ちなみに。

この家には俺以外にも成仏できていないヒトがいる。

見るからにたおやかな女性で、現在の状況に成り立てホヤホヤの時に色々とお世話になったので今でも俺はこのヒトに頭が上がらなかったりするのだが、それはそれこれはこれ。

 

『おかえりなさい──お義母さん』

『…あら。うふふ』

 

母と娘という関係からか、俺の愛しい人と目の前のこのヒトはよく似ている。

けれども、このヒトには俺の愛しい人のような全部全部薙ぎ倒すようなパワフルさはなく、雪のような、霧のような、そんな儚さがあった。

 

『あらあら……うふふ』

 

だからだろうか。

このヒトは俺が愛しい人の話をすると、とても嬉しそうに笑うのだ。

それがなんとも面映ゆくて、俺はついつい話をしてしまうのだった。

 

『それで───』

 

彼女は、俺と愛しい人の馴れ初めやそういうのをよく聞きたがった。

だから、俺は今日も今日とて生前の話を彼女にする。

 

『うふふ……そうなのね』

 

 

その日、女は右往左往とする男を導くことにした。

なにせずっと人知れず見守ってきた愛娘の伴侶なのだ、助けないわけがない。

 

『こんにちは』

『!?…あ、はい。こ、んにちは?』

 

にこり、と意識的に微笑んだ。

そして、女はそのまま心底から笑んだ。

なにせ…女が笑うだけで大概の男は惚れてくるのに。

しかし目の前の男-愛娘の伴侶は突如現れた女にびっくりしただけで普通に接してきたのだから。

 

(さすが…あの子とあの人が認めた相手ね)

 

これでデレっとしてきたら娘には悪いが…するつもりだったけれど。

 

(なんてね)





一応この二人以外にも家には色々"いる"んだけど、女性の方が秘密裏に駆除しまくってるんだよね。
なのでイマイさん含め他の人は何も知らないんだよね…。
いや、バックさんだけは何かしらに気づいてるかもしれないけど。
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