さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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疲れすぎると味覚がバグる銀弾概念。



仕事中毒睡眠不足

その日、自らの父が適当に粉をぶち込んで、ほぼ泥といっても過言ではないコーヒーをどこか逝った目でガブ飲みしていたのに、シロガネハイセイコはゆるりと綺麗な笑みを見せた。

 

「父さん」

「……?」

「寝てください」

 

それは。

それはそれは見事な手刀であった。

相手が何の警戒もなしに、シロガネハイセイコをぽけ〜と見上げていたのも綺麗に手刀が入った理由ではあったが、まさかまさかの一撃であった。

 

「ぐふっ」

 

そのままシロガネハイセイコの父──シルバーバレットは昏倒した。

愛息子からの手刀一発で沈んだのである。

……さて、それからどうなったかといえば、まず父が倒れたことを聞きつけた他きょうだいが飛んできた。

そして彼らの目に映ったものは、倒れ伏した父の横で佇みながらコーヒーを飲むシロガネハイセイコの姿である。

彼らは思ったらしい。

ああこれはコイツがやったんだな、と。

まあ当たり前だが。

それからきょうだいたちは各々、父が眠る布団の用意をしたりだとか、父が休んでいる間の仕事の割り振りをしたりだとか、そういったことをテキパキとこなしていった。

そして、シロガネハイセイコに向き直る。

 

「ん、ハイセイコ!」

「……はい?」

「親父を寝かせてくれてありがとよ! いやあ助かったぜ!」

「え? あ、ああ……どういたしまして……?」

「それはそれとしてお前も休めよ!!」

 

……という具合である。

いやもう、彼らの切り替えの早さには舌を巻くしかなかったが、まあシルバーバレットは普段から働きすぎだったし、良い機会だったのかもしれない…とか考えるあたり、親子であった。

 

「なんで僕も…」

 

よく考えてみてほしい。

シルバーバレットは実の子どもたちから見てもワーカーホリックに輪をかけたワーカーホリックだ。

そしてその父に次期当主として付き従うシロガネハイセイコ…。

そこから導き出される答えとは?

そう、シロガネハイセイコも父よりはマシと言えど───ワーカーホリック、なのである。

 

「お前だって働きすぎなんだよ!」

「いや……でも僕まだ若いですし……」

「うるせえ! いいから休め!!」

 

そしてきょうだいたちはシロガネハイセイコを布団に叩き込んだのち、幾人かは彼が布団から抜け出さないように監視を、と…。

 

 

シルバーバレットが目を覚ましたのはそれからしばらく経った頃である。

彼は頭に謎の痛みを抱えながら目を覚まして、横になったまま周囲を見渡した。

今日やる仕事はどこまでしたっけだとか、あの書類はどこへやったっけだとか、そういったことをぼんやりと考えながら。

 

「寝てください父さん」

「はぐぅっ!?」

 

……また、眠りに落ちるのでした。





僕:
シルバーバレット。
今日も元気なワーカーホリック。
基本甘党だけど疲れすぎたら味覚が振り切る。
泥のようなコーヒー以外にもエグいモン食ってる時がある。キムチ丼白米抜きとか。
とはいえ、自分のワーカーホリックに感化されて息子がワーカーホリックになっているとは思ってない。
ちゃんとハイセイコに休みあげてるんだけどなぁ(自分は働きながら)。
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