脳をこんがりされつつ。
(…う〜ん)
部屋の中に響くのは爪をやすっている音だけ。
うやうやしく取られる足が角度を変えるごとにあちらこちら別の場所を持たれ、「あ、ぅ」と、思わず声が出てしまう。
(こんなのが楽しいのかなぁ?)
僕には分からない。
それでも、一生懸命な親友──グローリーゴアに文句は言えない。
(まぁ……いっか)
爪切りをしてもらうのなんて何年ぶりだろう。
それもヤスリまでかけてもらうなんて。
「まだ?」
「…もう片方も、あるから」
「げ〜」
もう現役は引退したというのに。
現役の頃ならそりゃまぁ、爪をケアを疎かにしていたら脚力云々で爪が割れたとかそういうので熱心にケアしてたけど。
「はい、おしまい」
「ありがと〜」
グローリーゴアは僕の足を優しく撫でながらそう告げると、自分の膝の上に僕を座らせたまま話し始める。
「ねぇ、スー」
「……なぁに?」
やわやわ、猫の首元を撫でるように撫でられているのでグローリーの顔は見えない。
「あのね、僕……。スーが好きだよ」
「……え?どうしたの急に」
突然の言葉に僕は思わずグローリーの顔を見上げる。
するとそこには僕を覗き込むように見つめるグローリーの顔があった。
その目はどこか真剣で、でも切なげに揺れていて、なんだか不思議な気持ちになる。
(どうしたんだろう)
そんなことを考えているとグローリーは僕の頬に手を添える。
そしてそのまま優しく撫でながら口を開いた。
「僕はね、キミに…スーに変えられたんだよ」
「うん」
「スーと出会うまでは世界が色褪せていたし、心が揺れることもなかった。欲しいものもなかったし、他人に好かれようが嫌われようがどうでもよかった」
「うん」
「でも」
「…うん」
「スーは、僕にたくさんのものをくれた」
「……うん?」
グローリーはそう言うと僕の手をぎゅっと握る。
その目は。
「ねぇ、スー……」
(なんだろう……)
なんだか心臓がドキドキする。
僕は思わず俯いてしまうが、グローリーはそんな僕を逃さないとでも言うように頬を優しく撫でるとそのまま顔を上げさせた。
「好きだよ、スー」
*
自分は、誰に従うというウマではない。
生まれながらにして、どちらかというと他人の上に立つ側であったし、したくなくとも周りが勝手に自分を持ち上げてきた。
だから周りが望むように振る舞ってきた。
それが自分の役目であったし、そうするだけで皆が自分を認めてくれたから。
(でも……)
「グローリー」
キミだけは、違った。
自分自身にも分からない、自分を見つめてくれた。
そして、見つめるだけに飽き足らず、認めてさえくれた。
「ねぇ、グローリー」
キミは、僕の世界を変えてくれた。
僕にたくさんのものをくれた。
それは決してお金なんかでは買えないものだ。
(僕は……)
「グローリー?」
キミが、好きだ。
【栄光を往く者】:
グローリーゴア。
捕らえたけど、尽くしてるのはこっちの方。
本人以上に本人のこと知ってそう。
それはそれとして愛が重い。