ぬいぐるみはかわいい。
はっきりわかんだね。
僕の先輩こと、シルバアウトレイジは意外と可愛いもの好きだったりする。
「…」
「それ、可愛いですね」
「!…ち、違うからな!
「はい、分かってますよ」
ウマグッズ専門店でぬいぐるみを吟味する姿に『からかってる訳じゃないですよ』アピールをする。
ぬいぐるみは個体ごとに刺繍の具合が違うらしいので、それを見比べて吟味していたのだろう。
「…えへ、僕のぬいぐるみを贈るんですか?」
「!……う、うっせえよ!」
先輩は照れた様子でそっぽを向く。
先程から先輩が熱心に見ているのは何やかんやの記念として作られた僕のぬいぐるみだ。
特別ということでマントと王冠が着いている。
「ふふ」
「お前のだけじゃねぇヨ!親父のも買うわ!!」
ムン!という具合にプリプリ怒っているが、その姿も可愛らしい。
「先輩」
「……なんだよ」
「ありがとうございます」
「……別に」
先輩は顔を背けたままそう呟いた。
*
昔から可愛いものが好きだった。
弟妹は言わずもがなだし、弟妹を理由に今も可愛いものを集めたりもする。
というか、弟妹たちは俺の可愛いもの好きを知っているからこそ「あげる〜」と色々くれる。
「……」
俺は今、自室で、その中でもバレぬように作った収納スペースでとあるぬいぐるみと睨めっこしている。
ウマのぬいぐるみだ。
しかも、俺が可愛がっている可愛い後輩モチーフのやつ。
(……いや、違うからな!
そんな言い訳をしながら、ぬいぐるみが汚れないようにカバーをかける。
我ながら恥ずかしいことをしているのは分かっているが、ぬいぐるみを見ると口元がニヤけてしまうからもうダメだ。
「…末期過ぎる」
はじめは、アイドルホースと謳われた曾祖父のぬいぐるみをもらったことだった。
普通のガキだったら耳や腕の出っ張った部分をしゃぶりにしゃぶってヘニャヘニャにするところを、幼き日の俺はキラキラとした目で見つめて片時も離そうとせず。
逆に少し汚れただけでまるで世界の終わりのようなギャン泣きをし始める始末だったのだから手に負えない。
「はぁあ…」
スマホの小さな画面に映るのは、抱き締めても有り余るサイズのウマのぬいぐるみ。
欲しい…と思わなくもないが、俺のキャラ的にどうだろうか。
「……」
スマホの画面に映るウマのぬいぐるみを、そっと指で撫でる。
(……アイツがモデルか)
フワフワな毛並みは手触りが良さそうだし、耳や尻尾も柔らかそうだ。
「……欲しい」
そう呟くと、余計に欲しくなってしまうので慌てて口を閉ざすのだった。
【銀色の激情】:
シルバアウトレイジ。
可愛いもの大好きクラブのウマ。
ぬいぐるみ収集を主としているが買うのはもっぱら知り合いのぬいぐるみのみ。
自分のぬいぐるみは買わないのでよく弟妹たちから送り付けられているとかどうとか。