さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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こういうのでもいいかなって…。



『継承』

『継承』というモノがある。

いま現在でとその起源やら詳しいことは分かっていないが、古来より成されていた儀式であることには変わりないといい、ウマ娘という種族がいる場所なら名称こそ違えど同じようなことが行われているという。

 

「あ、はい。分かりました」

 

親友であるグローリーゴアと遊びに来ていると生まれたばかりなのだろうウマ娘を抱いたお母さんに『継承』を頼まれた。

『継承』は、言うなればジンクスとか祈りとかそうあう類のものだ。

『継承』してもらうと健康に育つというのがよく言われる話だが、最近ではトゥインクルシリーズで名の知れた有名ウマ娘に『継承』してもらうと競走バとして大成する…と言われているとかいないとか。

まぁ、ただの道端で有名人に会う確率なんて低いからね。

サンプルもそうないから噂にとどまっているんだろう。

 

「じゃあ、この子に『継承』しますね」

 

そう言って僕たちは抱きかかえられたウマ娘ちゃんの前で手を繋ぐ。

そして……ふたり目を閉じて、花火が上がるのを見守る時みたいに空を見上げて…。

 

「終わりましたよ」

「あ、ありがとうございます!!」

 

お母さんは深々と頭を下げて感謝の言葉を述べると、小さな赤ちゃんを大事に抱えながらその場を後にしていく。が、

 

「…あまり『継承』はしない方がいいんじゃないかな?」

「なんで?」

 

不意にきた驚くべき言葉に親友を見遣れば、「あんなの続けてれば、嘘でも僕らに『継承』してもらったって言ってくるやつがいるよ」と淡々とした口調で言う。

 

「そんな……」

 

僕は思わず言葉を失うが、グローリーは僕の肩に手を置いて話を続ける。

 

「まぁ、『継承』なんてジンクスみたいなものだけど……」

「……そうだね」

 

親友の言葉に僕も頷く。

確かにそうだ。

そんなことあるわけないだろうと自分に言い聞かせて、僕らはその場を後にしたのだった。

 

 

むかしむかし、僕は『継承』を受けたという。

母が継承元のふたりの熱狂的なファンで、産まれたばかりの僕と買い物に来ていたところ、ひょんなことから遭遇したふたりに頼み込んで『継承』してもらったのだと。

 

「……」

 

しかし。

継承元のふたりは今もなおとても有名な選手で。

しかもそのふたりは『継承』を頼まれたら快く了承していたというから、

 

「……はぁ、」

 

トレセン学園内ではびこる、話。

 

『私、グローリーゴアさんとサンデースクラッパさんに昔、継承してもらったの!』

 

そんなわけ、ないのに。

 

「……」

 

僕は、自嘲気味に笑う。

それを賞賛するのは、分からない奴らだけ。

僕たちは、分かっている。

()()()『継承』された、僕たちは。





『継承』:
まだ幼いウマ娘に本格化を終えたウマ娘ふたりが祈る行為。
世界中に名は違えども同じ行為が散見されている。
元は幼いウマ娘の健康を願うものだったが、ウマ娘レースが一般的となった今では有名ウマ娘に『継承』してもらうと競走バとして大成するという話が付与されているらしい。
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