さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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まあ幸福にはなれるので。



気に入られたが最後?

「【黒潮】くん」

「【黒潮】さん」

 

そう声をかけてきたのは、同期であるシルバデユールと、その同室であり後輩であり……のシルバープレアーであった。

何故だか、このふたりは俺をよく気にかけた。

俺よりももっと強かったり、注目されるやつがいるはずなのに、もっぱらこのふたりは俺を見かけると声をかけてきた。

 

「…お前ら、アイツらはいいのか」

「?…いや、そりゃあ仲良いけど四六時中一緒ってわけでもないし、ねぇ?」

「そうですね」

 

ふたり揃って自分がどんな目で周りに見られているのか気が付かないまま、俺に駆け寄ってきて俺に話しかける。

 

「そういえば、【黒潮】くんってもうご飯食べた?」

「いや……まだだ」

「そうなんだ!じゃあ僕らと一緒に食べに行こ!」

「……ああ」

「やったー!楽しみだねぇ、プレアー」

「そうですね」

 

……俺はこのふたりが苦手だった。

いや、別に嫌いというわけではない。ただ苦手なのだ。

ふたりは俺にとても良くしてくれたし、俺なんかに優しくしてくれた。

でも、だからこそ苦手なのだ。

沈もうとしたところを引き上げにくるコイツらが。

『キミなら、もっと出来るでしょう?』と、まるで俺が出来るのが当然であるかのように言ってくるコイツらが。

……だから俺は、ふたりが苦手だ。

 

「【黒潮】くんってさぁ」

「……なんだ?」

「よく僕たちのこと避けるよねぇ」

「はい、避けていますね」

「……別にそういうわけじゃねぇよ」

 

そう答えるとふたりは顔を見合わせる。

そしてまた俺の方を向いて言った。

 

「じゃあさ!もっと仲良くなろうよ!」

「そうですね、仲良しになりましょう」

 

そんなふたりの笑顔に俺は少し、…いやだいぶ引き攣った笑みを返したのだった。

 

 

何となく、いいなあと思ったのだ。

クラスメイトの【黒潮】くん。

まだ【心の叫び】くんと仲良くなる前で、幼なじみのプライドシンボリとメジロシルフィードとサクラスタンピードしか友だちじゃなかった頃。

 

「シルバープレアー」

「えっ、あっ、な、なに!?」

「コレ、お前のだろ。落としてたから」

「ぁ…あ、あり、がと」

「どういたしまして」

 

もう捨ててもいいサイズの消しゴムだったのに、【黒潮】くんはわざわざ拾って、渡してくれたのだ。

 

「く、【黒潮】くん」

「なんだ?……あ、ありがとう……?」

 

消しゴムのお礼にと渡した小さなチョコレート。

それをちゃんと受け取ってくれる彼のことが、僕はなんだか気になってしまったのだ。

 

(良い人、だな…)

 

もっと、仲良くなりたいなあ。





【黒潮】:
04世代なのでシルバデユールなどと同期。
1コ下に全弟がいる。
変わりない日々に鬱屈することもあるが、本気でダークサイドに落ちようとするとデユール&プレアーのシルバー同室組が引き上げにやって来て頓挫する毎日。
シルバー同室組のことは好意的に見つつも苦手らしい。

シルバー同室組:
デユールとプレアー。
【黒潮】のことが好き。
親友枠ではないけど気にかけるお気に入り感。

なお史実では父【黒潮】、母父デユールorプレアーで海外G1制覇したりとかしてる子がそこそこいる模様。
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