さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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水面下でバチバチ。



気づかない猫

「先輩!」

「…ぁ。スンマセン、オルフェ先輩。じゃあまた」

 

まるで猫のように首元を撫でられていた先輩に声をかけると、するりと抜け出して僕の元へとやってきた。

 

「…よかったんですか?」

「いや、ちょうど良かったよ。…アレ、やられ過ぎるとあの人の取り巻きに睨まれっからさあ」

 

シルバアウトレイジというウマがいる。

その血筋と才覚から注目されることもままあるが、シルバアウトレイジが注目される一番の理由は───。

 

「『暴君の愛し子』ねぇ、」

 

そう、暴君──オルフェーヴルに()()()()()()()()が故。

他のウマがそうしたなら不敬と言われるだろうことでも「()い」のひと言で許される。

 

「ま、初対面からあれだけ可愛がられたらなあ」

 

また、あれだけ暴君の寵愛を受けても靡くことなく自我をもって、この人はしっかと立っているものだから。

 

(……まあ、あの人の思いどおりにはなってますよ。ええ)

「先輩、ちょっといいですか?」

「ん?なんだ?」

 

僕は先輩の手を取ると校舎裏へと連れ出した。

そして周りに誰もいないことを確認すると先輩に抱きついた。

 

「…?【飛行機雲】?」

「先輩充電中で〜す」

「…人来たらやめろよ」

「はい」

 

僕は先輩の肩口に顔を埋めて、すうっと息を吸い込んだ。

 

(先輩の匂い)

「ん?【飛行機雲】」

「……はい?」

「お前、なんか……変わったな」

「え……」

「いや、なんとなくだけどさ」

 

先輩は僕から体を離すと僕の顔を覗き込んでくる。

 

(まずい)

 

僕は咄嗟に顔を逸らした。

 

「な、なんでもないです!じゃあ!」

 

そう言って僕は逃げ出したのだった。

 

「変な【飛行機雲】…」

 

 

「どう思いますゥ?オルフェパイセ…むぐっ!」

「余を前にして余以外の話か?」

「別にいいじゃないスか」

「はぁ、」

 

今日も今日とてオルフェーヴルの膝の上に乗せられながらシルバアウトレイジ(気まぐれな猫)は不満げに唇を尖らせる。

 

「余が貴様を愛でているのだ、他に目移りする暇など無いだろう」

 

そう言ってオルフェーヴルはシルバアウトレイジの首筋を撫でる。

 

「……そっすか」

「どうした?」

「……いえ、別に」

(……なんか最近、ねちっこい気がする)

 

はじめましての理由は同じトレーナーに担当されることになったからであって、どこぞの少女漫画みたいにふたりは幼い頃に会ったことがありました!なんて記憶はないのに。

 

「先輩、」

「ん?」

「……なんでもないです」

(先輩の愛、重いなあ!)

 

 

シルバアウトレイジはオルフェーヴルの腕の中でそっとため息を吐いた。

 





【銀色の激情】:
シルバアウトレイジ。
オルフェ先輩に可愛がられているのは同じトレーナーに担当されている縁からだと思っている。
オルフェ先輩に『運命』を感じはしないけど、何故だか無下にできない…とは思っている。
オルフェ先輩に可愛がられるのはいいがその取り巻きに睨まれるのは嫌。だって怖いし。
また後輩であり、同室である【飛行機雲】のことを可愛がっているらしい。
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