さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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初めからダート無双してて、中央も地方も蹂躙し尽くしたせいでどうしよっかな〜してる【戦う者】の話。



『運命』に出会う前

「う〜ん」

 

その日、サンデースクラッパは悩んでいた。

まぁ多くの人が贅沢な悩みだと言うだろうが、本人としては死活問題なのである。

 

「う〜ん」

 

再度、唸る。

その悩みは単純明快であった。

それは、『出られるレースがない』ということである。

サンデースクラッパの適正はダートだ。

しかし、時代を牽引する一強とまでなってしまい、『1着はサンデースクラッパで決まってるから』、『サンデースクラッパが強すぎてダートは面白くない』とまで言われてしまう始末…。

これで一念発起して、「ダートを極めたから今度は芝に行こう!」と言える適正のウマであれたなら良かったのだが…。

 

「ドリームトロフィーリーグに、行くかなぁ…?」

 

引退という選択肢は、ない。

何故なら自分はまだ走れるという()()()()自覚があるから。

しかし、どこで走るのかと問われるとそこで思考が止まる。

中央も地方も出られるレースはすべて出尽くし勝ちという勝ちをさらってきたのだ。

 

「う〜ん」

「なら、アメリカへ行ってみては?」

「え?」

 

唐突にかけられた声に振り向くと、そこにはいつも僕のファンだと言ってくれる後輩の内の一人がいた。

そのファン具合は地方遠征の際でも僕のウイニングライブを最前列で見てペンライトやら団扇を振っているほどであり、彼女以外にも似たような子がいるのを考えると、己のファンと言えど、その熱狂ぶりは凄まじい。

 

「アメリカ?」

「えぇ、アメリカです。サンデースクラッパさんの戦績なら申し分ないのではないでしょうか?

だってあなたは──現日本ダート界最強なのですし?」

「……なるほど。いや、買いかぶり過ぎだよ」

 

確かに、それも良いかもしれない。

僕の所属しているチームアルデバランは海外遠征を積極的にしているところであるから、頼めばプランも組めるかもしれない。

けど、

 

「僕と走って諦めない相手って、いるのかなあ」

「いますよ」

 

唯一の懸念点を漏らすと、即答で返ってきた。

 

「『あの人』は、サンデースクラッパさんと走るのを楽しみにしています」

 

そう言って微笑む後輩に、僕は彼女の言う『あの人』が誰なのかは分からなかった。

しかし、

 

「……そっか。なら、日本を離れる時が来たのかもしれないな」

「! では!」

「あぁ、アメリカ遠征の話、進めてみるよ」

 

「同志に伝えてきます!」と走り去っていく後輩に手を振りながら、色々手回ししなくちゃなあと考える。

チームと相談に、また多分会見みたいなのもしなくちゃならないだろうし。

 

「…ま、頑張るか」





【戦う者】ファンの後輩ちゃんたちはみんな【戦う者】の娘とか孫です。
しかも何となく馬世界の記憶を有しているため、【戦う者】の『運命』である相手に出会えるようにお膳立てしました。
【戦う者】が『運命』に会わないまま終わるなんて世界、あっていい訳ないよなあ!?
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