さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ほんの些細なことでも、誰かにとっては運命の出会い


それはいつかに繋がるもの

まだ走ることは許されず、いつものように放牧でぼうっとしていると見たことのある男の人がお世話してくれる人に連れられてやって来た。

誰だったっけ?と考えたが5分程考えて、僕の馬主さんだと思い出した。

 

撫でてくれるけど騎手くんほどは上手くないなぁと思っていると馬主さんの足に隠れるように男の子がいた。

馬主さんはその子に僕を触ってみろと促しているみたいだけどその子は僕を怖がって隠れたまま。

仕方ないなぁと思いながら、その子に顔を近づけた僕は力加減に気をつけながら擦り寄るのだった。

その日は休みで、久しぶりに家に父がいた日だった。

「いい所に連れて行ってやろう」という父に連れられて行った先で俺は彼に出会う。

 

「ほら、××撫でてみろ」

「…やだ、怖いよ」

「コイツは大人しいから大丈夫だよ」

 

牧場の人が連れてきたその馬は黒くて小さな馬で、父に撫でられるのに不満そうな顔をしていた。まぁ、子どもである俺からしても父の撫で方はあまり上手くないなぁと感じていたが。

 

「わ、」

 

嫌だ、怖いと父の足に隠れていると彼が顔を近づけ俺に擦り寄った。

初めはびっくりしたけれど、たてがみがふわふわと顔に当たるのがくすぐったくて、いつの間にか俺は笑っていた。

 

 

 

それから、俺は時間がある度に彼の元へ連れて行ってくれと父親にねだったものだった。

中々体格が変わらない彼と大きくなっていく俺。

 

でも、あんなことがあって父は馬主になることをやめた。

一応その時所有していた馬の管理はしていたようだが、彼がいた時に比べると酷く競馬を避けていた。

父にとって、彼は初めての馬だったから。

 

そして、父から会社を受け継いだ俺は、父と同じように馬主になった。

あの日の彼のような馬に出会いたいと思ったから…。

凄い馬がいるというのは風の噂で聞いていた。

血統は聞いた覚えのない雑草血統に二冠馬・ヒカルイマイをつけたもの。

破竹の勢いで関西三歳馬のチャンピオンになり、そのあまりの強さにクラッシック出走も視野に入れていたらしいが厩舎の火事により断念。

昨年は古馬を相手取り、今年はミスターシービーなどを相手取った毎日王冠での完勝も話に聞いていたがそれでもさまざまな不運がありG1競走には出てこない馬。

 

スズカコバンか、いやそれ以上に期待されている西の不世出の天才。

 

「本当に残念だ」

 

今年の有馬記念を見ながら呟く。

2年連続の三冠馬。史上初のジャパンカップ日本馬勝利。

輝かしい今年一年を振り返りながらも脳裏に浮かぶのは姿も知らぬその馬の名前だった。

 

「シルバーバレット、ねぇ…」

 




僕:意外と子どもは好き。
多少乱雑に扱われても動じないタイプ。
早く走りたいな…と思っているが走れるのはいつになるやら…。
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