さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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私だって、アンタを見ていた。


◆一等星の憧憬

「よォ」

「…」

「久しぶりだな、シルバーバレット」

「…帰ってきたんだね、シリウス」

 

どかりと隣に座ったシリウスシンボリにシルバーバレットはゆっくりと瞬きする。

シルバーバレットとシリウスシンボリはそれなりに仲がいい、はずだ。

一応陰ながらではあるが入学したてのシリウスシンボリの面倒を見てやったこともあったし…。

それがなんで今こうなっているのかは分からないが。

 

「海外はどうだった?楽しかった?」

「…まあまあだな」

「そう」

「アンタは?」

「え?」

「アンタはどうなんだ?G1ひとつぐらい獲れたかよ」

「…それが、」

 

怪我だの何だのでまだ獲れてないとシルバーバレットが苦笑して言うとシリウスシンボリは虚をつかれたような顔をしたが、

 

「ハッ!ならアンタに負けを叩きつけてやってもいいってことだよなぁ?」

「…そうかもね」

 

笑ったシリウスシンボリがシルバーバレットの顎をクイと持ち上げる。

彼女は顔がいいからこういうのも似合うけれど、…昔は可愛かったのになぁとどこか違う思考をするシルバーバレット。

 

…意識ぐらいしろよ

「?」

 

 

あの頃のシリウスシンボリはまだ幼なじみであるシンボリルドルフのことを慕っていた。

けれど違和感を感じるのはすぐだった。

 

アイツは、ルドルフはあんな綺麗な笑みを浮かべるような奴だっただろうか。

ルドルフはあんな優しい性格だったろうか。

気持ち悪い、気持ち悪い気持ち悪い…!

獅子のようだったお前はどこに行った!

 

誰にも慕われ、理想を追い求める()()シンボリルドルフのことがシリウスシンボリは嫌いだった。

誰もがシンボリルドルフを慕う中で、

 

『キミごときが僕を、僕たちを幸せにできるっていうの?』

 

そう現実を突きつけたのがシルバーバレットだった。

正当に評価されることは無い"サラ系"出身のウマ娘。

シリウスシンボリがトレセン学園に入ってきた当時、普通のウマ娘と同等の実力を発揮している"サラ系"のウマ娘は彼女しかいなかった。

 

『なぁ、アンタ』

『…キミは?』

 

その姿を見てシリウスシンボリはシルバーバレットに話しかけた。

いつもひとりきりだった彼女に話しかけるのはそこまで苦ではなく。

シルバーバレットは後輩に対しては面倒見がいいようで、何度か絡むと仕方ないという態度でこっそりとだがシリウスシンボリの世話を見てくれた。

そんなシルバーバレットのことをシリウスシンボリは…。

 

 

 

「…私だって、アンタの目に映るくらいのウマ娘になりたかったよ」

 

少しばかり懐かしく、愛おしい昔のことを思い出して。

歓声と、祝福を浴びるシルバーバレットを見ながらシリウスシンボリはそうひとり呟くのだった。

 




シリウスシンボリ:それなりにシルバーバレットに懐いている。
何だかんだ面倒を見てくれる先輩なシルバーバレットに構って欲しい後輩ムーブする時もあるかもしれない。
実のところシルバーバレットに自分を見て欲しいという欲を抱えている。

「一等星のクセに、アンタの視線も奪えないなんて…ははっ」
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