さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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誰にも捕まえられないように。



二人で逃避行

ふわ…と漂ってきたいい匂いに目を覚まし、匂いのする方へ歩を進めると「おはよう、カツラギ」と微笑むシルバーバレットがいた。

 

「おはよ」

「おはよう。今日もカツラギが好きな卵焼き焼いてあるからね」

「おう。顔洗ってくらあ」

 

お味噌汁ついでおくね、の声を背に受けて洗面台へ。

 

「美味しそ」

「そりゃあよかった」

「いただきます」

 

パン!と手を合わせて食事に手をつける。

絶妙な炊き加減の米に豆腐とわかめの味噌汁。

焼鮭もうめぇし、卵焼きも言わずもがな。

 

「今日は和風なんだな」

「まあね」

「朝から焼鮭って豪華だからよ」

「だねぇ」

 

正面に座る彼女の朝食はあたしが食べている量と比べると本当に少なくて。

 

「足りるのか?」

「うん。カツラギが美味しそうに食べてくれるからお腹いっぱいだよ」

「……そうかよ」

 

その笑顔の理由を知っているからこそ、なんだかむず痒い気持ちになりつつも、悪い気はしなかった。

 

「あ、そうだ。今日って暇だったりする?」

「特に予定はねぇけど……なんかあったか?」

「買い物したいんだよね。付き合ってくんない?」

「あぁ、」

 

あたしたちは、労働と呼べる労働もせず、こうして暮らしている。

資金はトゥインクルシリーズとドリームトロフィーリーグの時に稼いだものがあったし、その稼いだものを資産運用で増やして、生活に必要な分以外は手をつけていない。

 

「んじゃ、行くか」

「うん」

 

朝食を食べ終え、食器を洗ってから着替えて出かける準備をする。

 

「お待たせ」

「おう」

 

玄関で待っていたシルバーバレットに声をかけて靴を履き外へ出ると、まだ少し冷たい風が吹く季節であるからか、ふたりしてぶるりと震えた。

 

「さむっ……」

「……もうちょい厚着してくりゃよかったな」

「だね……」

 

ふたりで顔を見合わせ苦笑いすると、シルバーバレットが手を差し出してくるのでそれを引っつかむとあたしの服のポケットへと突っ込んだ。

 

「えへ…」

「……」

 

実のところ、───あたし-カツラギエースとシルバーバレットは駆け落ちして、現在ここで暮らしている。

元から秘密の仲であったが、年を経るにつれてシルバーバレットへの注目の目が過激になり、またシルバーバレット自体も狙われるようになり、彼女のドリームトロフィーリーグ引退と同時に夜逃げのように逃げたのだ。

そうしなければ、そうしなければ…。

 

「カツラギ?」

「……っ、い、いや、何でもない」

「そう?ぼうっとしてたよ?」

「ちょっと考え事してたんだよ」

「……そっか。何かあったら言ってね?」

「おう……」

 

シルバーバレットはあたしがしていたことを知らない。

知る必要はないし、あたしだって知られたくないからそれでいいと思っている。

 

「んじゃま、行くか」

「うん!」

 

ポケットの中で繋いだ手はそのままに歩き出す。

きっとこれからのあたしたちの生活もそう悪いものではないだろう……なんて思いながら、あたしは隣にいる大切な人の手を握り返した。

 

「なぁ、シルバーバレット」

「ん?」

「あたしらの駆け落ちって……成功だと思うか?」

「……成功だよ。だって、こうしてカツラギと幸せに暮らせてるもん」

「そうかよ……」

 

ならよかった、と呟いてから大きく息を吸い込む。

冷たい空気が肺を満たしていく感覚が心地良い。

これからあたしたちはどんな生活を送るんだろうか。

そんな未来を想像しながら、あたしはシルバーバレットの手を引くのだった。

 





僕:
シルバーバレット。
カツラギと一緒。
年を経るごとに「なんかヤバくね?」と薄ら勘づいて、最終的にはカツラギと逃げた。
たぶんCBとかルドルフの同期周辺勢からの執着がヤバ過ぎたと思われ。
ガチでカツラギとの関係を秘密にしてたため、幸せな生活送ってる現在でも滅茶苦茶探されてそうだし、見つかった暁には…?
うん、くわばらくわばら〜…(白目)。
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