さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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「流石の僕も、羽虫一匹一匹の名前を覚えようなんて思わないよ」




飽きる迄は

びっしゃりとズブ濡れになっていたマブダチに駆け寄り、「何があった」と問い正せばそう告げられた。

やられた内容としてはバケツで水をかけられたという、大の大人がするにしては幼稚でしかない嫌がらせではあったがソウイウ審美眼が肥えていない俺でも分かるほどの質のいい衣服がこうも無惨に濡れているというのは、やはり見ていて気持ちのいいものではない。

 

「お前も大変だな」

「……別に、そうでもないよ」

 

俺の同情に、当の本人は気にしていない様子。

……まあ、確かに買おうと思えばこれぐらいの衣服、コイツならポンポン買えるからこの程度は大した問題ではないのかもしれないが。

それでも俺はそれがどうしても許せなくて、ついこんなことを口走ってしまった。

 

「お前…今みたいなの結構されてんのか」

「どれぐらいから『結構』なのかは他人によると思うけどね」

「少なくとも、昨日今日に始まったことじゃないだろ」

「……まあね。でも別に気にしてないよ」

 

そう言って濡れた衣服を絞るマブダチの表情に陰りはない。

それは強がりから来るものではなく、本当になんとも思っていないことが見て取れた。

……やっぱりコイツは強いな、と思う。

俺なら構わずぶん殴りに行ってるところだが。

 

 

「…」

 

シルバーバレットというウマは、興味がないものにはとことん興味を抱かないタチだった。

必要あらば覚えるけれど、必要がないなら…とんと。

しかし、シルバーバレットの興味というやつは、

 

「どした」

「いや、あの子いいなあって」

「そ」

 

───ある日、唐突に向く。

それまでは一欠片も、一ミリも、一ミクロンも興味がなかったくせに。

ふと興味を引かれると、そればかりを目で追うようになる。

 

「……」

 

シルバーバレットは、己が興味を持ったものに対する執着心が凄まじかった。

それは例えば、食に興味がないくせに一度気に入った食べ物があれば(少食ではあるが)飽きるまでずっとそれを食べ続けたりとか。

あるいは、それまで興味がなかったくせに一度やり始めると何時間でもやり続けるとか。

そんな具合に……シルバーバレットの『お気に入り』はコロコロと変わるのだ。

そして今回その『お気に入り』になったのは───まだ幼さの残る新人であった。

此処に来るということはそこそこのキャリアを積んだのだろうが現状は右も左も分からぬヒヨコちゃん。

そしてそんなヒヨコちゃんが、シルバーバレットの『お気に入り』になった理由とは。

 

「───」

 

それは、そのウマがまだ幼さの残る新人であることと……その容姿が(シルバーバレット基準で)とても可愛らしいこと。

シルバーバレットは、基本的に可愛いものに目がない性質であったから。

 

「ちょっとお世話してくるね〜」

「ん」





僕:
シルバーバレット。
興味が無いものには本当に興味が無い。
でも一度興味を覚えたら一直線。
しかし結構な頻度で飽きる。
それを対人関係でもよくするため、ドロドロデロデロの飴を与えたあと、飽きたする。
多分相手側からグイグイ来ないといけないタイプ。
じゃないとすぐあっちへフラフラ〜する。

SS:
マブダチ。
僕の移り気の強さを知っているがどうせ俺のとこに帰ってくるしなの後方腕組み。
自分が僕にマブダチと呼ばれるまで好かれていることを知っているためよく周りに「フフン」とばかりに勝ち誇っている。
勝ち組。
誰がなんと言おうと勝ち組。
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