さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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そこそこデカ感情。



普通の、友人

撫でられている感覚があったので、ゆるりと目を開ければそこにはお抱えの装蹄師であり、友人のザンさんがいた。

そう言えば頼んでいたっけ?と寝起きの頭で考えるものの、いくら考えてもそんな予定は欠片ほども見つからず、首を傾げた。

 

「おはよう、ザンさん」

「おう、おはようさん。よく寝れたか?」

「ウン、おかげさまで…?ところでなんでここにいるノ?今日ってなにかあったっけ?」

 

今日は特に予定もなかったはずなんだけどナと思いながらそう聞けば、呆れたような顔でため息をつかれた。

なぜだ。

解せぬ。

 

「俺がお前に会いたかったから来たんだよ」

 

首を傾げるぼくに、ザンさんがそう言う。

「へえ」と間抜けな声を出せば、今度は頭を軽く小突かれた。

 

「なんだよ」

「いや、ザンさんがそんなこと言うなんて珍しいナァって」

「そうか?俺は結構言ってると思うけどな」

「そうだっけ?」

「……まあいいけどよ。ほら、飯食いに行こうぜ」

 

そう言ってぼくを居心地のいい我が家から引きずり出して歩き出すザンさん。

たしか、今日ぼくの娘夫婦と孫たち家族水入らずで出かけるとか言ってなかったっけ?

…という前提があるとすると。

 

「え、ザンさん今日って」

「あ?いいんだよ。あいつらは家族水入らずで出かけてくるつってたんだから。俺は俺でお前に会いたかったし」

 

そう言ってぼくの頭をぐしゃぐしゃと撫でるザンさん。

先程の言葉から推察するに僕の娘家族が出かけることをこの男は知っていた、もしくは出かけるところで出くわしたかで、ザンさんはぼくに会いに来た。

そしてぐっすりと眠っていた僕を眺めていたついでに、ご飯を奢ると言っているのだろう。

 

「え、いいの?」

「いいんだよ」

「……いや、でも悪いし……」

「俺がいいって言ってんだからいいんだよ。ほら行くぞ」

 

そう言ってぼくの手を引くザンさんにぼくは慌ててついていく。

……まあ、たまにはいいかナァなんて思いながら。

 

 

すやすやと眠る顔はひどくあどけなくて。

しかしその顔には見る人が見ればウッと顔を歪めるだろう傷痕。

その痕をゆっくりと撫でると、擽ったかったのか「んんぅ……」と小さな唸り声をあげながら身をよじる。

そしてまたすやすやと寝息をたて始めた。

 

「ほんとよく寝てんな」

 

そんな寝顔を見ながら小さく笑って頭を撫でれば、無意識なのか手に擦り寄るような仕草をするから。

 

「無防備すぎんだよ、お前は」

 

そう言っても眠っているこいつには聞こえていないだろうが。

いやまあ聞こえてても困るんだけどよ。

 





元々はその肉体に惚れ込んだのに気がつけば内面にも堕とされてる系のザンさんと何も知らないバックおじいちゃん。
バックおじいちゃんはパッと見凶暴ではあるけれど、それを抜けば基本あどけない感じの無垢なウマなのでネ…。
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