さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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『運命』。



それだけの話

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そこが終わり。

彼女を見てしまったが最後、俺の人生とやらはそれまでを捨てることになって、彼女のことを想うたびに臓腑を焦がす熱情が彼女を求める。

一目惚れ…というには業火が過ぎたソレは遂に俺をマトモじゃない方向へと突き動かして。

 

「まァ…なんだ?ずいぶん美丈夫な」

 

攫ってきた第一声、まず彼女はそう言った。

叫ばれるだろうか、暴れられるだろうかと懸念していたこちらの身としては、その反応は予想外だった。

 

「ハハッ。スゲェ顔」

 

彼女はそう言って俺の頬を撫でた。

その手つきの優しさに、俺はようやくそれが現実なのだと確信できた。

 

「アンタのことが好きだ」

 

それから、間髪入れずにそう告げると、彼女は「そっか」とだけ言って笑った。

それが彼女と俺の出会いだった。

 

 

「お。今日は肉じゃがか?」

 

いい匂いがして、手を洗ってうがいしてからひょっこりとキッチンへ顔を出せば「そうだぜ」との言葉と共にいい色に煮えたじゃがいもを差し出される。

 

「あふっ!」

「ちゃんとフーフーしてから食えよな、バカだな〜」

 

「な〜?」と彼女が自身の腹を撫でる。

まだ目に見える膨らみこそないが、その中には確かに子が宿っていて。

 

「ほら、あーん」

「……あ〜」

 

そんなことを思いつつ、パクリと彼女が先程差し出してくれたじゃがいもを頬張れば、程よくなった熱さが舌を焼く。

「美味いか?」と聞く彼女に頷けば、彼女は幸せそうに微笑んでから俺の頭を撫でた。

 

「子供の名前どーしよっかなぁ」

「まだ性別分かってないんだろ?」

「そうだけどさ〜。…もう分かっちまってるからなあ」

「?」

 

俺が攫ってから一年半。

彼女の方から急いてきたが何とか押し止めて、ちゃんと手順を踏んで。

そうしてようやく迎えたのが今日だった。

 

「なあ、──リリィ」

「……ん?」

「今幸せか?」

 

彼女にそう問うて、その頰に触れた。

出した声が思った以上に揺れていて、俺はたまらず笑ってしまった。

 

「ああ……幸せだよ、旦那様」

 

 

ホワイトバックの愛娘であるホワイトリリィがいなくなったのは唐突であった。

知り合いの装蹄師(ザンさん)の店でのバイトの帰りに、忽然と。

しかもそこいらは街灯だとか人通りだとかも少ない場所で、目撃情報もクソもなかった。

幼い頃から護身術をこれでもかと授けておいたはずの娘が、誰にも見つからずに消えるなどありえない。

 

「クソッ……!!」

 

攫われたのだろうと予測はついた。

だが、身代金の要求もなければ、犯人からの接触もない。

 

「なんでだ……」

 

それでも娘が生きているという確証が欲しくて、ホワイトバックは方々を必死に駆け回った。

しかし、そんな彼を嘲笑うかのようにホワイトリリィの消息は掴めなかった。

そうして一年が経ち、二年が経つ頃になってようやく。

 

「ただいま父さん。で、こっちで縮こまってる奴が私の───」





【電撃の差し脚】:
ヒカルイマイ。
一目惚れした。
そこそこのヤラカシをしているが被害者自身が許してるし、被害者の親も何故だか許してくれた。
たぶんホワイトバックに会いに行かずそのまま暮らす√がいずれ生まれる僕が凄惨牧場()の因子を継いでいる大家さんに暴力を受ける√なんだと思われ。
何も覚えてないけど、手放しちゃダメだと思ったらしい。
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