今もなおまぶたの裏に残る影は君の姿によく似ていた。
涙を、絶望を、『どうか』と祈る声を聞き届けたのは、君だった。
『シルバーだ、シルバーだ!
シルバープレアーが先頭だ!
シルバープレアー5馬身のリード!
今、この瞬間祈りが届く!
ロンシャンの地に祈りが届く!
シルバープレアー勝ったー!!
白峰遥、悲願の凱旋門賞制覇ーッ!!』
銀色の祈りと名付けられたその馬は、名前のとおり祈りを聞き届けた。
日本では惜敗を続けたその馬の真価が現れたのは海外の地、それも日本の悲願の地でのことだった。
シルバープレアー
Silver Prayer 牡 芦毛
父:シルバーチャンプ
母:シルバードリーム
母父:ヒカリデユール
馬主:白銀創
調教師:****
生産者(産地):███牧場(××)
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主な勝ち鞍:12'凱旋門賞(G1)
生年月日:2002年4月1日
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シルバーチャンプから始まった『銀色の一族』の悲願はシルバープレアーと白峰遥の手によって叶えられた。
『銀色の一族』にとっても騎手である白峰遥にとっても悲願であった凱旋門賞制覇に馬主と二人して泣いたのは記憶に新しい。
凱旋門賞馬となったシルバープレアーは、今現在10歳という年齢。
悲願のG1、それも凱旋門賞制覇ができたこともあり、前々から相談していたとおりに引退となった。引退後は███牧場にて種牡馬となるらしい。
そんな折、白峰遥は馬主である白銀創からとある提案を受ける。
「…"シルバーバレット"のサルベージプロジェクト、ですか?」
遥がオウム返しした言葉に創は強く頷く。
『銀色の一族』の悲願を叶えたのだ、だから次はこちらの悲願を叶えようと。
…『銀色の一族』の始まりには遠因となった競走馬がいる。
その名は"シルバーバレット"。
かの馬は遥の憧れでもあり、…遥の叔父の一番の相棒でもあった。
11歳馬ながら規格外のスピードで世界をひっくり返したその競走馬は、今もなお暗い海の底に沈んでいる。
「クラウドファンディングで、ですか…」
"シルバーバレット"を亡くしたあとの遥の叔父─白峰透の憔悴具合はそれはもう酷いものだったと聞く。
必要最低限の連絡しか取らず、ほぼ世捨て人だった白峰透は"シルバーバレット"との思い出を書き綴った『さよならはまだ言えない』との遺稿を遺し、一人寂しく死んだ。
その遺稿である『さよならはまだ言えない』を読むと最期まで、"シルバーバレット"の帰りを待っていたのだと分かるほどに、白峰透は"シルバーバレット"に囚われていた。
「…見つかりますか?」
"シルバーバレット"を探そうとするのは遥も大賛成だ。
だが遥は知っている。
"シルバーバレット"は輸送機が海に墜落した事故で亡くなった。
元々、海に墜落した航空機の原因調査は難航するのだという。
それは何故か。
「残骸回収にどれだけ時間と費用がかかると思ってるんです」
そう。
遥は昔調べたことがある。
憔悴しきった大好きな叔父に元気になってもらいたくて調べたのだ。
遠き日の遥には到底叶えもできなかった、
「年単位の時間がかかっても、…やるんですか?」
そんな無謀な夢を馬主である白銀創は肯定したのだった。
*
凱旋門賞制覇と同じくらい、それも叶えたかった夢だった。
父が/叔父が帰ってこなかった"彼"をずっと待っていた。
父は諦めて、諦めたけどずっと後悔していた。
叔父は諦めきれず、"彼"を待ち続けていなくなってしまった。
だから…、
「あった!ありましたよ!」
その声が聞こえた時、『奇跡だ』と思った。
海の底から引き上げられたのは小さな、錆に塗れて二つに割れた蹄鉄。
Uの字の曲がる部分で均等に割れていたその遺物は彼らの手に手渡された。
湧き上がった感情を鎮めるにもどうにもできなくて、遥と創は二人抱き合う。
泣いて泣いて、…それでいて笑って。
そんな彼らを、生まれも育ちもバラバラだが、共に"シルバーバレット"を探していた人々が見守っていた。
「…父さん」
「…おじさん」
発見された蹄鉄は、"シルバーバレット"の馬主と主戦騎手であった男たちの墓に収められた。
彼らにとっては何十年振りの再会だっただろう。
「「これでもう、寂しくないよな」」
そう言った瞬間。
遠くで、馬の嘶くような声がした、気がした。
祈りを聞き届けた馬:シルバープレアー。2002年生まれの芦毛の牡馬。
稀有な実力がありながら怪我などで早期引退を余儀なくされることが多い銀色の一族の中で10歳まで怪我なく走り切った異端児。
最後の凱旋門賞までG1を勝てなかったが、それでも連対率100%で引退した怪物。
現役時代に一番仲がよかった馬は某夢への旅路だったり。
数年後、彼の息子が凱旋門賞を制覇することをまだ誰も知らない。
リクエストから【白峰透死後にシルバー血統による悲願の凱旋門獲得後に世界中のバレットファンによるクラファンで墜落飛行機サルベージプロジェクト】の話でした。