さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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『月』も『太陽』もおこがましい。



星になれなくて

キミが、他のみんなみたいに僕に焼かれればよかったのに。

 

「たしかに、キミは『太陽』だったよね」

 

肯定こそするものの、その目は僕になぞ焼かれてはいない。

いや、焼かれてはいるのだが、その目を焼いたのは───僕ではない。

 

僕に一番近かったキミ。

近かったからこそ、僕に焼かれて欲しかった。

でも、キミは焼かれなかった。

 

「ねえ」

 

僕はキミに問いかける。

 

「キミは何を憎んでいるの?」

「……憎む? ……僕が?」

 

キミは僕の質問の意図がわからないようで、ただオウム返しにそう口にした。

 

「うん、そうだよ」

「……憎い……ああ、そうだね……」

 

キミは少しだけ考えるような仕草をした後、…ゆっくりと口を開く。

 

「僕は────」

 

 

たしかに。

あの時代にいた者は、みんな『英雄(キミ)』という存在に焼かれていたのだろうけれど。

けれど。

 

「ちょっと眩しい星だよね」

 

ただ、ひとり。

誰も彼もが焼かれるのに、一番近くにあるはずの僕は。

 

「でも、僕は太陽じゃない」

 

そう。

英雄(キミ)』じゃ僕を焼くことなどできないのだ。

だから、僕にできるのは。

 

「僕はね、月が好きなんだ」

 

遠い昔に見た、記録映像。

ペイル・ブルー・ドットみたいな小さな姿。

 

「月は、太陽みたいに眩しくはないけれど」

 

それでも。

 

「とても綺麗だよね」

 

だから。

僕は『英雄(キミ)』に焼かれてあげない。

 

 

あの頃。

あの頃。

その時分を思い出すと、ただただ『太陽』と『月』を思い出す。

寄り添うようにいたそのふたつは、憎らしいまでにお似合いで。

しかし、『太陽』には熱すぎて触れられぬものだから、みんながみんな『月』に焦がれた。

『太陽』が燦燦と、けれど皆を平等に焼くのなら、『月』はキラキラと皆をやわらかく照らすから。

『月』ならば触れられると。

『月』ならば触れてもいいと。

そうして、その輝きを奪おうと躍起になって───結局、誰もそれには触れられなかった。

 

「……」

 

やわらかく見えた『月』は、その実ひどく冷ややかだった。

遠景しか知らぬものはそのやわらかな光に焦がれるが、近づいた者ならすぐに分かる。

やわらかく見えたのは遠くから見ていたからであって、近づけば近づくほど、その銀色が冷たく身を貫く。

それは、太陽のよりも───。

 

「……」

 

でも、『月』は輝く。

『太陽』みたく輝こうとする星々たちを眺めながら。

眺め、導となりながら。

キラキラと、キラキラと輝く。が、

 

「『月』にも『太陽』にも────なれないよ、僕は」

 

当の本人はと言えば。





『太陽』に一番近かったけれど焼かれなくて、みんなからは『月』と見られているけどそれもおこがましいと思っている【銀の祈り】の話。
【銀の祈り】の『太陽』も『月』も、ねぇ…?
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