さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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そこには何も。
ただ遺るはまた、灰になる者共ばかりなり。



灰燼に帰す。

シルバーバレットというウマは、どこまでいっても『太陽』であった。

遠目から見て惹かれて、触れようとすれば焼かれて。

飛んで火に入る夏の虫であり、誘蛾灯に群がる羽虫のような誰かたちは、どうしようもなくシルバーバレットの才能に打ちのめされ、いつしか憧れは妬みとか虚しさとかに相成って、シルバーバレットから離れようとするけれど…。

 

「どうして、」

 

瞼を閉じたら、ぼんやりとした様々な色の光を見る時のような。

そんな心地で、シルバーバレットの光が離れない。

その光を離すためには、もはやこの眼を抉りだし、盲になるしかなくて。

 

「どうして、あなたは……」

 

シルバーバレットの『光』が眩しすぎて、直視できない。

だから、憧れた誰かたちは、誰も彼も目を逸らす。

それでも……。

 

「どうして、あなたは……そんなにも輝いていられるんですか?」

 

その疑問に答えられる者はいなくて。

ただ、シルバーバレットは今日もまた輝き続けるのだ。

 

 

太陽(あなた)』の隣に立ちたかった。

太陽(あなた)』と同じ世界を見て、『太陽(あなた)』と同じ視座で、『太陽(あなた)』と対等に話したかった。

けれど、あなたは『太陽(あなた)』であり、私たちはただの人でしかなかった。

いつかのよだかがそうであったように、生き物というものはすべからく太陽に焼かれるのです。

近づこうとすればするほどにジリジリと焦がされ、近づけば近づくほどにその輝きは増していき、やがて燃え尽きて灰になる。

 

そう思うと。

太陽(あなた)』は、その灰をまとって美しくなるのでしょうか。

太陽(あなた)』に焦がれる生き物の残滓をまとい、また誰かを惹き付けるのでしょうか。

太陽(あなた)』は、灰をまとうからこそ美しいのでしょうか。

それとも……。

 

シルバーバレット(たいよう)

 

あなたの輝きが眩しすぎて、直視できない。

だから、憧れた誰かたちは、誰も彼も目を逸らすのです。

でも。

グルグルと私たちの中に渦巻く炎を、私たちはどうすればいいのでしょう。

太陽(あなた)』に焦がれた時から灯った、この炎を。

心臓から始まり、手の、足の指の先の先まで血液がごとく渦巻くこの熱を。

水でも、風でも、光でも、音でも、温度でもないこの熱を。

私たちは、どうすることもできないまま、ただ手をこまねいて見ていればいいのでしょうか。

 

「わたしは、『太陽(あなた)』のことが嫌いです」

 

そうは言っても、生きとし生けるものは『太陽(あなた)』無しでは生きれないので。

 

「嗚呼、嗚呼」

 

きらい、きらい、きらい、

 

「なのに、」





太陽(あなた)』:
シルバーバレット。
ただのウマ。
けれど『太陽』。
みな等しく焼き焦がし、誰のことも見ない。
ただ光り輝いている。
だって、勝手に近づいて焼かれたのはそっちの方なので。
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