さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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『愛』なのだ。



例え何でも

大きくなったら、お父さんが誇りに思うような大人になりたいな。

 

『いい子』で、優秀な子であることを望まれた子どもが初めて抱いた夢はそんなモノだった。

子どもの父は、子どもがどんな夢を選ぼうと「それがキミの選んだ道なら」と全肯定してくれるだろうが(悪の道に進まない限りは)、それでも子どもは、父を失望させないためにも、そして何よりも自分自身のために、この夢を叶えたいと思っていた。

 

「お父さんみたいな凄いウマになる」という夢を抱いた子どもがまず始めたことは、父の"かつて"について調べることだった。

父がどんな道を辿ってきたのか、子どもはよく知らなかったのだ。

父はいつも家にいて、色々と大変そうに仕事をしながら、それでも子どもに構うことも忘れず。

そして、子どもが「お父さんみたいなウマになる」と言うと、父はいつも嬉しそうに笑ってくれた。

だから、子どもの夢は父に喜んでもらうためのものでもあったのだ。

 

『そうかい? じゃあ大きくなったら一緒に走ろうね』

『うん! ……でも、お父さんといっしょのレースには出られないんだよね?』

『そうだね……でも大丈夫さ。キミならきっとすごいウマになれるよ!』

『……ありがとう、お父さん』

 

そんなやりとりをしたのはいつのことだったか。

 

「…あ、目が覚めた?ハイセイコ」

「…」

「疲れてたみたいだねぇ。いつもは足音とか気配がしたら起きるのに」

 

寝起きでボヤける視界には、クスリと微笑む最愛の父の姿。

 

「……お父、さま」

「うん。おはようハイセイコ」

 

夢を見ていたのだと、子どもはようやく気付く。

そして、まだ寝ぼけた頭で父のことを呼ぶと、父は優しく笑ってくれた。

その笑顔が見たくて、子どもは何度も同じ夢を繰り返すのだ。

 

「お父さま……僕は……」

「うん?」

「お父さまみたいなウマになるのが夢です」

 

そんな夢を語って聞かせたのは何歳の頃だったか。

もう覚えていないけれど、父はいつも嬉しそうに「なれるよ」と言ってくれた。

頭を撫でて、微笑んで。

いや他の人たちだって『君ならなれる』と言うけれど、本心からそう信じてくれるのは父だけであったから。

 

「そっかぁ。うふふ、お父さん冥利に尽きるね」

 

しかし。

 

「でも、そろそろお父さん離れしなくちゃダメだよ?ハイセイコ」

「…」

「も〜、そんな顔しないの!」

「…僕はいつまでもお父さんの子どもですもん」

「そりゃあそうだけどさぁ!いつまでも可愛い可愛い僕の子どもだけどね!?」

「お父さま」

「ん!?」

「…だいすきですよ」

「……。うん、僕も好きだよ〜」





【銀色のアイドル】:
シロガネハイセイコ。
父に対しての感情が重め。
…というか、子どもの頃と精神性にあまり変わりがないというか。
お父さんが一番だからね、仕方ないね。
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