おいついてきてね。
ちょっとした遊びがてら、ってヤツだ。
「スーちゃん、お兄ちゃんと追いかけっこしようか」
「うん!」
ふたりで公園に遊びに行った折、公園には自分たち以外誰もいなかったので苦肉の策で思い付いた遊びだ。
「じゃあ、スーちゃん。お兄ちゃんが逃げる役ね」
「わかった!」
「いくよー」
数えられる数字にゆったりと駆けていく。
本気を出しちゃあいけない。
幼い可愛い弟を泣かせる趣味はないし、転けただけならまだいいが、僕を追いかけて脚を壊したなんてなった日にゃあ腹を切って詫びるしかなくなる。
「ごー、ろーく……」
ゆっくりと数を数えていく。
スーちゃんの脚は遅い。
僕はわざと走るスピードを緩めた。
それでも充分、逃げ切れるだろうという計算の上でだ。
「きゅーう、じゅう!」
ああ、やっぱりな。
このくらいの距離ならスーちゃんでも充分に走って来られる距離で、それでいてこのスピードだったらいい感じに捕まらないだろう。
「お兄ちゃん、つかまえた!」
…と、思っていたら。
おぼつかない足取りではあったがとてとてと走ってきて僕の腰に抱き付いてくる。
「あーあ」
僕はわざと残念そうな声を上げた。
「捕まっちゃったかあ」
スーちゃんの頭に手を置いてぐりぐりしてやる。
喜ぶスーちゃんの声を聞きながら、内心僕は「マジかよ…」と戦慄していた。
いくら力を抜いているとはいえ、走るには走っていたのである。
それを、この幼い弟は一生懸命追いかけてきて、そして僕の脚に抱き付いてきた。
「お兄ちゃん、すきー!」
「……スーちゃん」
僕はスーちゃんの肩に手を置くと、屈んで視線の高さを同じにした。
「スーちゃん。僕を追いかけてきてくれてありがとうね」
「うん?」
きょとん、とした顔になるスーちゃん。
ああもう本当に可愛いな!
そのぷにぷにのほっぺをつついてやりたい衝動に駆られるがぐっと我慢する。
そのあとも休みを挟みつつ追いかけっこして…。
「そろそろ帰ろっか」
「……ん」
「明日も遊びに来ようよ。今日はもう夕焼けさんになったからね、遅くなるとリリィが心配するから」
「うん」
手を繋いで帰る。
スーちゃんの手はぷくぷくで、とても温かかった。
……とまあ、こんな感じに僕はスーちゃんを可愛がってきたわけだけども。
「ううむ……」
その愛くるしさが仇になったのか何なのか。
スーちゃんは僕よりもリリィの方がいいらしい。
いや、それ自体はいいのだ。
むしろ喜ばしいことである。
だがしかし!
「おにいちゃんと走るのヤダ……」
そこが問題だ!
僕:
シルバーバレット。
まだマシだったころ。
でも力を抜いているとはいえ、自分を捕まえられる末弟に段々ヒートアップしていた結果、アレに。
いつの間にやら追いかけられる方ではなく追いかける方になり、末弟を鍛え始めた()。
でも殺気ぶん回すのはヤメテクダチイ…。