さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ここで幸せ時空の話をひとつまみっと。


自慢の息子

シロガネハイセイコとシロガネヒーローは同期である。

父であるシルバーバレットの初年度産駒を代表する二頭であり、ライバルでもあった。

 

『『父さん!』』

『はいはい、元気だねキミたち』

 

シロガネの名を冠する馬はたびたびシルバーバレットがいる███牧場へと休養に来ることがあった。

元の███牧場はこじんまりとした場所であったのだが、シルバーバレットの活躍により敷地が拡大され、シルバーバレットが引退した今も敷地を拡大する計画があるらしい。

 

『父さんの自慢の息子って僕とヒーローどっちですか?!』

『俺ですよね、父さん!』

『いや俺だ!』

 

二頭はよく喧嘩する。

シルバーバレットの初年度産駒として、一家の長兄組として、どちらが上なのかとほぼ毎日争っているのだ。

まぁ、それも父であるシルバーバレットに褒めてほしい一心からなのだが。

 

『二人とも僕の自慢の息子だよ?』

『『そうじゃなくってぇ〜!』』

『?』

 

父がそういう馬であることは二頭とも嫌というほど分かっているのだけど、それでも尊敬する父から自分の方が上だという言葉が欲しいもので。

 

『なにやってんだバカども』

『誰がバカだ!』

『ゲッ、ガールじゃん』

『バカはバカだろうがよ』

 

いがみ合うハイセイコとヒーローの前に呆れたため息をつきながら現れたのは彼らと同じくシロガネの名を冠するシロガネガール。

普段は多少口の悪い彼女だが、

 

『やぁ、ガール』

『あっ、お父様♡』

 

尊敬する父であるシルバーバレットを前にするとその態度はコロッと変わる。

 

アイツ、父さんの前だといつもああなるな…

いっつも婆さん譲りの喋り方の癖にな

『なんか言ったか?』

『『イイエ、ナニモ』』

 

ハイセイコとヒーローは牝馬であるガールに尻にひかれている。

その理由としてはシルバーバレットが牧場の牝馬にとても優しく接している馬であることと、…彼らの祖母であるホワイトリリィがこの牧場のボスを張っているという理由がある。

なので下手に牝馬に逆らうとシルバーバレットに悲しげに苦言を呈されるか、クッソ怖いボス馬であるホワイトリリィに泣くほどしばかれるかの二択がかかっているのだ…。

遠い昔の話ではあるが、まだ幼い頃に二人してガールを泣かしてしまった時の恐ろしい記憶が二頭には刻まれている。

 

『ガール、幼い子たちは元気かい?』

『は、ハイ!とても元気です』

『そうか…。また顔を見に行けたらいいなぁ』

『みんな待ってますし、お父様が顔を見せたらお祖母様もお喜びになると思います』

『そうだね。リリィにも随分会ってなかったし、お世話する人に頼んでみるかな…』

 

そんなこんなでシロガネハイセイコとシロガネヒーローの第×××回どっちが父さんの自慢の息子か対決は終幕となったのだった。




シロガネハイセイコ:
主な勝ち鞍
皐月賞、日本ダービー、ジャパンカップ(1996年度)
KGVI & QES、有馬記念(1997年度)

母父ハイセイコーのシルバーバレットの初年度産駒。牡馬。
主戦騎手は白峰透。
引退レースであった1997年有馬記念にてシロガネヒーローと行ったハナ差1cmの死闘は今でもベストバウトとして語られている。

シロガネヒーロー:
主な勝ち鞍
菊花賞(1996年度)
ステイヤーズミリオン(1997・1998年度)

母父タケホープのシルバーバレットの初年度産駒。牡馬。
シロガネハイセイコの宿命のライバル。
バリバリのステイヤー。気性はちょっと粗め。
よくシロガネハイセイコといがみ合っているが仲が悪いわけではない。
逆に仲がいい。

シロガネガール:
主な勝ち鞍
桜花賞、香港カップ(1996年度)
香港ヴァーズ(1997年度)
香港国際ボウル(現:香港マイル)(1998年度)

母父ホウヨウボーイのシルバーバレット初年度産駒。牝馬。
人呼んで『香港の女王』。
ホワイトリリィを尊敬しており、いつの間にか性格もそっちよりになっていた。
父であるシルバーバレットのことを尊敬しており、父の前だけはお淑やかな馬になる。
人前に出てる時もだいたい大和撫子している。親しい人の前でちょっと暴虐になるだけである。


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