さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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望み。



幸せでありますように

「…親父」

「どうしたの?ヒーロー」

 

珍しくひとりでいた親父に声をかけると、朗らかな笑顔に迎えられる。

すっかりと白くなった芦毛の髪は、太陽に照らされキラキラとしているけれど、傍目から見るとどこか浮世離れしていて、幽霊と対面しているような心地になる。

 

「今日はひとりなんだな」

「ああ……みんな出かけててね。ハイセイコもお守りってことで行ってもらってるから、僕ひとりで留守番なんだ」

「そうか。じゃあ、ふたりっきりってことか」

「……そうだね」

 

穏やかに微笑む父の顔を、こんなにも間近に見たのはいつぶりだろう。

ずっとずっと父の傍には俺以外の誰かがいて、それはきょうだいであり親友のハイセイコこと、シロガネハイセイコであったり、下のきょうだいたちであったり、俺ではなかった。

それが今になってふたりきりになるなんて。

 

「どうしたの?ヒーロー」

「……いや、なんでもないよ。親父はなにか飲むか?」

「じゃあ、ホットミルクをお願いしてもいいかな」

「ああ」

 

お湯が沸くのを待ちがてら、俺は父の向かいに座った。

父はにこにこと穏やかな笑みを浮かべながらも、どこかそわそわしているように見える。

そんな父の様子に気づいていながらも、俺は気づかないふりをしていた。

それはきっと……俺も同じ気持ちだったからだ。

 

「ん、できた」

「ありがとう。いただきます」

 

ホットミルクを父に渡すと、父は嬉しそうに受け取り、フーフーと息を吹きかけながら飲み始めた。

そんな父の仕草はどこか幼さを感じさせて年齢詐称を疑いたくなる。

 

「……おいしいよ、ヒーロー」

「それはよかった」

 

俺も自分の分を用意し、父の向かいの席に座った。

それからしばらくの間はふたりともなにも話さず、ただ静かに飲み進めた。

嚥下する喉はただただ白い。

 

「親父」

「なんだい?」

「……いや、別に」

「ふぅん…?」

 

何を言いたかったのかは自分でも不明だが、伸びてきた手を甘受する。

やさしく俺の頭を撫でるそれは、かつてを思い出させるようで寂しいような、愛おしいような……そんな気持ちになった。

 

「ヒーローは、今幸せかい?」

「……ああ」

「そっか……」

 

俺の答えに父はどこか安心したように微笑んだ。

それはまるで自分が幸せであるかのように。

だから父に俺も問いかけた。

 

「親父は?幸せなのか?」

「……うん、そうだね」

 

父の笑顔は変わらない。

変わらないはずなのに、その笑顔はどことなく、なんて。

 

『ただいま〜!!』

「あぁ、みんな帰ってきたみたい。で迎えに行ってくるよ」

「…うん」





僕:
シルバーバレット。
実の子どもでも本心が読めなさそうな父。
子どもたち大好き!なので子どもたちの幸せのために邁進している。
でも子どもたちの一番の望みについてはこれからも知ることがない模様。
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