さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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そう言ってるでしょ?



ただのモブです

ただのモブウマ娘の日常は…早朝のトレーニングから始まる。

まだ人通りの少ない慣れた道をひた走り、家に帰りついてはシャワーを浴びてカロリーバーを食べてトレセン学園に向かう。

ちょうど登校してきた生徒たちでごった返す靴箱であったが、モブウマ娘は誰の興味の的になることなく、掴みどころのない霞のように学園に溶け込む。

 

「……」

 

己のクラスにつくと、モブウマ娘はストンと己の席に座した。

最後列窓際。

モブウマ娘にとって、これほど良い席はない。

()()()()()()()()身長もあって教壇にいる教師からはよく見えないし、グラウンドで授業している生徒を観察するにも絶好のポジションだ。

 

「……」

 

頬杖をつき、グラウンドを眺める。

現在授業は教師のちょっとした昔話に時間が割かれており、気持ちよさそうに語っているのを見ると、ふと、モブウマ娘は己の過去を思い出す。

それはかつて自分が大それた夢を見た日々のことだ。

 

「……」

 

思い出すのは、まだ幼き頃の記憶。

 

お母さん(×××)!おっきくなったら(××)世界一になるんだ!』

 

幼い自分の夢を母は優しく微笑みながら聞いてくれた。

そんな母に話すのが楽しくて、よく同じ話をしていた気がする。

…くだらない話だ。

一ミリも、ありえるはずのない夢物語だ。

 

「……」

 

でも、それでも幼い自分は本気で信じていたのだ。

…家族が、その夢を応援してくれたから。

 

「、」

 

はぁ…と、ため息をついた。

まだ自分が純粋だった頃を思い出すとどうにも今のギャップも相まって落ち込んでしまう。

……でも、仕方がない。

だって自分はモブだから。

そう、モブウマ娘は自分に言い聞かせる。

 

「ねぇ」

 

ふと、横から声をかけられた。

休憩の時である。

横を見るとそこにはクラスメイトのひとりが立っている。

「なに?」とモブウマ娘が答えると、彼女は少し照れたように頭をかきながら話しかけてきた。

 

「あー、そのさ……キミって今週末空いてる?もしよかったら一緒に……」

「ムリ」

 

モブウマ娘は、簡潔に答えた。

なにせ今週末のみならず今日も明日も明後日も、…モブウマ娘には『トレーニング』という予定がある。

トレーニングが目白押し、なのだ。

 

「あー……そっか。そうだよね」

 

モブウマ娘の返答に、彼女は残念そうにしながらも笑って見せた。

その笑みはどこかぎこちなくて、少し心が痛むが仕方がない。

今はトレーニングで手一杯なのだ。

そうこうしているとチャイムが鳴り響き、また授業が始まっていく。

 

「……」

 

モブウマ娘はふと窓の外を見た。

グラウンドでは今もなお後輩たちが元気に走り回っている。

そんな彼女らを見て思うことはただひとつだ。

 

(みんな、凄いなぁ)

 

そんな羨望だった。





モブ:
誰がどう言おうとモブ。
でもクラスメイトの、世間では有名なウマ娘たちに色々とアプローチを掛けられていたりするかも?
でも決して名前は明かされない。
故にモブである。
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