似ている。
「こんにちは」
その声音は一瞬僕の息を止めた。
穏やかで、優しいのに、ぞろりと脊髄を撫であげられるような気味悪さ。
悲鳴をあげることも、ましてや振り返ることも許されないような、絶対的な命令。
「はじめまして」
「……はじめまして」
僕は辛うじてそれだけを口にした。
「あれ、一人?」
「……はい」
そう、と呟いて彼は僕の隣に腰を下ろした。
彼は『シロガネ』というらしい。
ここいらでは見かけたことのない男であったが、どうしようもなくその威容が押さえつけて無理やり頭を垂れさせるようで、僕は顔を上げられなかった。
視界に映るのは自身のズボンの紺色。
「ふぅん、へぇ。まあ、危なくないうちに帰りなよ?」
「……はい」
僕はもう、それしか言えなかった。
シロガネはそれ以上なにも言わず、ただ僕の隣に座っていた。
どれほど時間がたったのか。
ふと、彼は立ち上がった。
そしてそのまま僕に背を向けて歩き出す。
行ってしまうのかと、僕は慌てて顔をあげたけれどその背に声をかけることはできなかった。
「縁があったら」
とだけ言って彼は去っていく。
僕はしばらく呆然として動けなかった。
*
そんなことを、思い出した。
むかしむかしの、まだ小学校にも入る前の記憶。
家の近くの公園で出会った誰かのこと。
顔も見なかったその誰かのことをいま思い出したのは、
「父さん…?」
「ぁ、」
「もしかして気分悪い?」
「い、いや、大丈夫、」
「そう?」
ぼんやりとした我が子の目が自分を射抜く。
何を考えているか分からない目。
よっぽどのことがない限り何かに興味を持たない眼差しは、まるで──。
「父さん」
「……なに?」
「なんでもないよ」
けれど。
そう言って我が子はまたぼんやりとした顔に戻る。
もう何も映さない目。
「ねぇ、レイさんは?」
「……さぁ?」
「そっかぁ」
*
「よう、ガイセイ」
「レイ」
「ん、元気そうだな」
シロガネガイセイは人間関係が希薄だ。
友人関係もほぼなければ、家族に頼るのもごくごく最低限で、あっちの方からモーションをかけなければシレッと消えてしまっていてもおかしくない程度には。
だからレイこと、シルバアウトレイジは、こうして定期的にガイセイの様子を見に来ている。
「今日はどうしたの?」
「いや、特に用はない」
「……そう」
「ああ」
そして、その会話は続かない。
沈黙が場を支配する。
けれどそれは気まずいものではなくて、むしろ心地いいとさえ思えるような静寂だった。
二人はそのまま何をするでもなくただそこに座っていた。
瓜二つ…ではあるけれど、どことなく雰囲気の重さが違うんだよね。
普通の子どもには会わせちゃいけない人だったというか、うん…。