もう、離れられない。
「一緒にいるなら、僕を捕まえてくれる人と一緒がいいな」
何となく、自分が放っておいたらどこかに行きかねない人間だと自覚しているので、そう告げれば周りに引き攣った顔をされた。
どうしたんだろう?と首を傾げてみんなを見回せば、「ここにいたんだ」と親友のグローリーゴアがひょいと顔を見せた。
「あれ?どうしたのグローリー?何か用事でも?」
「今日のご飯の食材が足りないって言ってたのはキミじゃないか…」
「え?…あ、あぁ!そうだったね」
そう言えばそうだったと思い出して、「またね」と手を振ればどことなく微妙な雰囲気で送り出されたのであった。
*
キミを捕まえられる人なんてそうそういない癖に、残酷なことを言うなあと思った。
なに、聞き耳を立てていたわけではない。
探しに来てたまたま聞いてしまっただけ。
…キミの背中を掴みたい人がどれほどいるのか、自覚がないから。
軽々と無理難題をふっかけては、それを「やれないの?」という目で見てくる。
キミはそんな人間だから、きっとこれからもずっと、色んな人に求められるのだろう。
……でもまあ、今はとりあえず。
「今日のご飯の材料を調達しに行こうか」
「うん!」
荷物持ちは体も大きくて力も強い僕の役目で。
キミは「自分でやる」と言うけれど、傍から見ると小さい子が必死になってひいこら運んでいるようにしか見えないので、そこは譲らない。
…何度子どもと間違えられて連れ去られそうになっていたことか。
トップ層のアスリートではあるが、筋肉がつきにくく、また愛らしい顔立ちのキミはお人好しなのもあってか、隙だらけで。
「グローリー」
「うん?」
「いつもありがとうね」
……ほら、またそうやって、人の気も知らずに笑うんだ。
*
グローリーゴアと一緒に暮らす…ようなものになってから久しく。
時おり何か必要なものがあれば元々住んでいた御実家持ちの別宅?に取りには行っているけれど、基本的にはこの部屋でふたり暮らしている。
「今日は、先に寝ておいていいからね」
「うん。…いってらっしゃい」
珍しいことに僕を共にすることなく一人で行くという親友を見送って一息つく。
さて、どうしようかしら?
ひとりだから好きにしていいんだろうけど、そうは思っても食べたいものもやりたいものもこういう時に限って浮かばないんだよなあ。
「でも食べないのも怒られるだろうし…」
そうして、どこかに足を伸ばしてキッチンカーの食べ物でも買いに行こうかと考える。
「美味しいの、あればいいな」
もうニコイチが常態になっちゃった感じ。
たぶん周りの人間にとってもそれが日常になってそう。
でも当人としては親友と一緒に暮らしてるだけなんだよね。