ドキドキ。
彼女は僕を好きだと言う。
似たような言葉はこれまでに何度も聞いてきた。
幼い頃から、落としたものを拾ったとか、ちょっとした笑みを向けただとかでそういったことをよく言われた自分としては『ハイハイまたか』という気持ちになるのは半ば当然のことで。
逆に故郷から遠く離れた、優秀な人材が多くいるトレセン学園でも同じようなことが起こった事実に我ながら呆れてしまった。
(……まぁ、でも)
僕は僕で彼女に対して好意を抱いているのは事実だ。
彼女の容姿や性格が好みなのはもちろんだが、それ以上に彼女は僕にとって特別な存在なのだ。
だから僕は彼女を拒絶できないし、受け入れている。
そうすることで彼女が幸せになるのならそれでいいとさえ思っていた。
しかし──だからこそ思うことがあるのだ。
「……本当にこれでいいのか?」
僕の疑問に答える人はいない。
ただ時間だけが過ぎていく中でカノジョにどんどん迫られていく。
逃げウマの癖に逃げ道が塞がれていっている状況。
…いや、
(笑えるな)
逃げようとしていないのか、自分は。
逃げようと思えば逃げられるはずなのに、彼女のことを待っていて。
「ねぇ、」
彼女が言う。
「キミのことが好きだよ」
それは何度も聞いた言葉だ。
しかし今はその言葉が重く感じる。
「だから、さ」
彼女は僕の手を握りながら言う。
「そろそろ返事を聞かせて欲しいんだ」
…そんなの決まってるじゃないか。
僕はキミの想いに答えることはできないんだよ。
*
想いを寄せるあの子が、まんざらでも無い顔をしていると気づいたのはいつのことだったろう。
はじめはそれとなく逃げていたあの子が、見え見えの隠れ場所で自分を待っていて、自分の想いを待っているのに気がついたのは。
そして、あの子がまんざらでもない顔をしている理由にも。
「キミのことが好きだよ」
それは何度も伝えた言葉だ。
しかし今はその言葉が重く感じる。
「だから、さ」
あの子が自分の想いに答えることはできないと知っている。
それでも自分は言うのだ。
「そろそろ返事を聞かせて欲しいんだ」
*
別に、嫌というワケではない。
けれどああやって絆されてしまった結果、一族レスキュー()が入ってしまうほどの事態になった前例があると幼い頃から聞いていた身にはどうしても躊躇いがある。
しかし、それでも彼女は言うのだ。
「キミのことが好きだよ」
もう何回目になるだろうか?
いや、何十回かもしれない告白を受けては断り続けてきて……もう数えるのも億劫になってきた頃だったと思う。
(……あれ?)
不意に彼女からの言葉が止まった。
彼女がよく来る場所で待っていても、会いそうなところに行っても誰も来なくて。
「…え?」
押してダメなら引いてみろって…コト!?