さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ともかく落ちる。



ぼちゃんと落ちるかズブズブか?

「おはようサンデー」

 

ふにゃおんと欠伸して挨拶すると「おー」と返事がある。

どうやら珍しいことに僕は昼寝をしていたようで外はすっかり夕方…というよりかは夜に差し掛かっている空模様であった。

 

「下ごしらえは先に済んでるから今から作るね」

「手伝う」

「やった〜」

 

友人期間が長いからか、手つきも慣れたものである。

…初めはおにぎりを握るのさえダメだったのになぁと、ちょっと親目線になりながらその風景を眺めていれば「視線がうるさい」と怒られた。

 

「だって、まさかキミがここまで料理できるようになるなんて思わなかったんだもん」

「テメェがいつまでも一人でしようとするからだろ」

「それはごめんって」

「まぁでも……お前とこうしてるの嫌いじゃないし……」

「ん?なんか言った?」

「……別に」

 

親友はそっぽを向いてしまったが、その耳はほんのり赤くなっているように見えた。

……え、なにこれ可愛い。

ちょっとキュンとしたんだけど。

いや、確かに前から美人ではあるけどさ!

 

「……ねぇ、キスしていい?」

「は!?やだよ!!」

「じゃあハグして」

「なんで!?」

「いいから!ほら!」

 

両手を広げて待っていれば、彼は渋々といった様子で僕に抱きついてきた。

いや……これはこれでなんか違うな?

 

「……いや、これ僕が求めてたのと違うよ」

「知るかよ!!お前がしろって言ったんだろ!!」

 

ギャーギャー言い争いながらも僕は親友を抱き締める。

……うん、やっぱり落ち着くなぁ。

 

「……えへへ」

 

細身に見えて意外とちゃんとしている体はそれなりに筋肉質だ。

 

「おい、何笑ってんだよ」

「別にー?」

「キモいんだけど」

「ひど!」

 

でもまぁ……こんなやり取りも悪くないかな。

だってほら、キミは僕の親友なんだからさ!

 

 

コイツのスキンシップに羞恥というものはない。

聞くに家庭環境が故か、愛情表現を惜しむことなく周りに贈り、それでいて博愛主義であるのだからタチが悪いと何度思ったことだろう。

それはきっと自分が(コイツの家族以外で)一番その愛情表現を食らっているからで。

手を繋ぐ、ハグから始まり果てにはキスまで。

ふわふわと無垢なコイツから与えられるそれは、最初は戸惑いこそしたものの今となってはすっかり慣れてしまった。

……いや、慣れていいものではないが。

 

「ねぇ、キスしてもいい?」

「……嫌だ」

「えー?なんでよ」

「逆に聞くけどなんでしたいんだよ」

「だってキミのこと好きだし」

 

ほらまたこれだ。

コイツはいつだってストレートに好意をぶつけてくるからタチが悪い。

 

「お前さ……」

「うん?」

「……なんでもない」

 

言いかけた言葉を飲み込んで俺は口を噤む。

「…他の奴にはするなよ」なんて。





僕:
シルバーバレット。
親友大好き!
懐に入れた相手にはたいそう甘い。
『愛』という底なし沼に突き落としてくるタイプ。
ヤバい。
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