さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ぼくの、かみさま。



*かみさま

シルバマスタピースというウマ娘にはいっとう溺愛している相手がいる。

それは彼女の幼なじみであるウマ娘・シルバーバレット。

体格のいいシルバマスタピースと比べるとまるで幼女のような容姿のウマ娘だが、その実力は折り紙付きでシルバマスタピース自らまるで執事のように何から何まで世話する程度にはその才覚に惚れ込んでいるという。

 

「バレット、今日のトレーニングは終わり?」

「うん。今日は軽めにしておいたよ」

「そうか。なら一緒に帰ろう」

「……いいけど、今日はお迎えの車が来てるんじゃなかった? ほら、あそこで待ってるし」

 

シルバマスタピースが指さした先には黒服サングラスのいかにもな男たちが待機している。

その男たちはシルバマスタピースを見つけると一斉に頭を下げて挨拶する。

 

「お嬢様。 お迎えに上がりました」

 

その様子に一瞬周りの温度が下がるが、シルバマスタピースが完璧な返答をすることで場の空気が戻る。

 

「じゃあ僕帰ってるから。…久しぶりにお家に帰るんでしょう?ゆっくりしてきていいからね?」

 

気を使って告げられた言葉もシルバマスタピースにとっては煩わしい。

なにせ、『天啓』だったのだ。

あの日、シルバーバレットと出会ったのは。

良家の子どもらしく、優秀ではあれど傲慢であった己を見るも無惨に砕き、『天啓』を与えてくれた。

 

「バレットがそう言うならそうするよ」

「うん、そうしてあげて」

 

シルバマスタピースはシルバーバレットにだけ見せるいっとうの笑顔で答えると黒服たちと共に去っていく。

その背中を見送るとシルバーバレットは一人自宅へと足を向けた。

 

 

「お嬢様、本日はいかがでしたか?」

「いつも通りよ」

「……そうですか。ではまた何かありましたらお申し付けください」

「ええ、ありがとう」

 

シルバマスタピースは完璧な淑女である。

また氷のようでもあり、鋭利な刃のようでもある。

温かさも親しみも何もなく、ただただ冷たく鋭い。

それが彼女の評価だった。

けれど、

 

「バレット」

 

たった、唯一。

その唯一だけが、彼女に温度を取り戻させる。

どこにでも居そうな、しかし霞のようなウマ娘だけが。

彼女に笑顔を、悲しみを、怒りを、楽しみを与える。

 

「バレット、キミは僕のモノだ。誰にも渡さない」

 

そう呟くと彼女はシルバーバレットの待つ自宅へと足を向けるのだった。

 

 

 

『天啓』とは何か。

それは神からの贈り物だ。

人は生まれながらに平等ではない。

いや、人だけではないかもしれない。

この世界は不平等で出来ているのだ。

けれど、その世界を変えることができるとしたら?

それはきっと『天啓』を受けること、それ以外に他ならないだろう。

そしてそれを与えられるのは選ばれた人間だけだ。

 

「ただいま、バレット」

 

そう考えると、シルバマスタピースにとっての神はシルバーバレットであった。

 





【銀の最高傑作】:
シルバマスタピース。
結構名家寄りの生まれ。
自分の価値観含めをぐちゃぐちゃにした相手を『神様』みたく見ている。
『神様』の前では表情豊かだがそれ以外では本当に氷のようなので、元々社交界などで彼女を知っていた名家組は学園で彼女と会った際にスゲェ勢いで二度見してそう(こなみかん)。
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