さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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しかたのないことです。



ふたりの休日

目を覚ますとそこには手持ち無沙汰に己の髪を弄ぶ親友がいた。

 

「おはよう」

「あ、おはよう」

 

ふにゃ、と笑う姿はどこか子どもっぽく、しかしそれでいて妙に蠱惑的だ。

 

「よく眠れた?」

「うん、まぁね」

「よかった。じゃあ早速だけど、朝ごはんにしようか」

 

そう言って彼は立ち上がり、台所へと向かった。

その後ろ姿を見送りながら僕はゆっくりと身を起こす。

それから大きく伸びをしてから立ち上がった。

 

 

朝食を食べ終えた後、僕らはリビングでのんびりとした時間を過ごしていた。

テレビでは朝のニュースが流れていたが特段そちらに意識を向けることはなく、ただBGMとして聞き流すばかりで。

 

「ねぇ、今日は何か予定ある?」

 

不意に彼が口を開いた。

 

「いや、特にないけど」

「じゃあさ、映画観に行かない?」

「映画?」

「うん。ほら、前に言ってたじゃない?何だったけ…とりあえず何か観に行きたいって」

 

ああ、そういえばそんなことを言っていた気がするな……。

僕は記憶の糸を手繰り寄せながらぼんやりと考えた。

確かあれは数ヶ月前のことだ。

二人で買い物に行った時、たまたま映画館の前を通りかかって何気なく話題に出した。

興味はないけど話題作らしいからという程度の軽い気持ちで口にしただけだったのだが、意外にも彼は乗り気だったのだ。

それからというもの、彼は時折その話題を持ち出しては機会を窺っていたのである。

 

「いいよ」

 

僕は二つ返事で了承した。

別に断る理由もなかったし、何より彼が楽しんでくれるならそれでよかったからだ。

 

「やった!じゃあ決まりね!」

 

嬉しそうに笑う彼を見ていると僕まで嬉しくなってくるから不思議である。

そんな時ふと時計を見ると時刻は午前9時を示していた。

ならそろそろ支度して、映画を見終わったあとに昼食でも食べようか…なんてことを考えつつ、ルンルンな彼を見やる。

 

「じゃあ準備してくるね」

 

そう言って立ち上がった彼だったが、すぐに何かを思い出したかのように立ち止まって振り返った。

 

「あ、そうだ。あともう一つお願いがあるんだけど……」

「なに?」

「その……さ、今日は手を繋いでもいいかな……?」

 

彼は少し恥ずかしそうにしながら聞いてきた。

そんな様子に思わず笑みがこぼれる。

「もちろん」と答えれば彼は嬉しそうにはにかみながら僕の手を取ったのだった。

 

 

「映画、面白かったね」

「うん」

 

12時台から2時間近く経つと流石に空腹になる。

でも、

 

(キミが嬉しそうにしているなら、いいか)





手を繋いでいるのはそうしてないとはぐれた時があったからっていうのと、離れた際に拐されそうになってたからです。
しかたのないことです。
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