さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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そこにいる。



霞がごとく

シルバープレアーというウマ娘がいる。

だがそのウマ娘は人気とは裏腹にレース以外の消息が上手いこと掴めないことで有名で、彼女が通っているはずのトレセン学園に赴いても彼女以外の取材はできるのに、肝心の彼女には会うことすらできないというのがよくあった。

聞くに生徒たちからしても彼女は───言うなればそう、『影の薄いウマ娘』であるらしく、教師など大人たちが彼女の名を呼ばなければいるのかいないのかすら分からないという始末。

だから、その記者が彼女に会えたのはまさに奇跡だった。

 

『───あ、あの! 私、月刊****の記者でして……!』

「……?」

 

学園にアポなしで突撃し、ようやく会えた彼女は、しかしどこか霞のような雰囲気を醸していた。

そして何より目を引いたのが、彼女の脚だ。

近づいてみて初めて分かる、極限まで削ぎ落とされた肉。

骨と皮だけのようなその脚は、まるで───。

 

「あ……すみません」

『え?』

「これからトレーニングがあるので……」

『あっ、いえっ! こちらこそ突然押しかけて申し訳ありませんでした!』

 

結局何も言えずトレーニングの邪魔になると追い払われてしまったが、私はその時のことをよく覚えている。

なぜならあの時の彼女の目は───光を映していなかったからだ。

それからも何度か取材を試みたが、あの偶然以降、彼女の姿すら見つけることは叶わず…。

 

 

シルバープレアーというウマ娘は、自分がそこまで人気であることを知らない。

まあ同期にあの【英雄】がいることもあるのだろうが、彼女の近親も有名で人気なウマ娘だったこともあり、自分の人気はその流れから来ただけだろうと。

それに、彼女自身が人付き合いを苦手としているのもあって、彼女は学園でもどこか浮いた存在だった。

 

「……」

 

今日も、シルバープレアーは黙々とトレーニングをする。

何故だか人の来ないこのコースは実質シルバープレアー専用となっていて、遠くからは他の生徒たちの喧騒が聞こえるのに、コースには彼女以外の姿がない。

だから今日も彼女は一人、黙々とトレーニングをするはずだったのだが……。

 

「プレアー!」

「!」

 

かけられた声に振り向けば、そこには彼女の友人である【英雄】がいて。

「やっぱりここに居た!」と、まるで子犬がしっぽをブンブン振っている幻覚が見えんばかりに嬉しそうな顔で駆け寄ってくる。

 

「プレアー、一緒におやつ食べよう!」

「あ……うん」

 

シルバープレアーは、あまり友人がいない。

だからこうして誘ってくれるのもクラスメイトなら彼女ともう一人(某弾丸のシンボリ)ぐらい。

「今日はね! 購買で新作パンが出てたから買ってきたんだー!」と話す彼女に苦笑しながら、ふたりおやつを食べ始めるのだった。





【銀の祈り】:
シルバープレアー。
見つけるのが至難の業なタイプ。
影が薄い…というか空気みたい。
近しい相手じゃないと見つけられなさそう。
なので『プレアーを探せ!』みたいなことになっていることも…?
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