さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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でも本人に自覚はない。



聖人みたい

自身を羽交い締め(ハグ)して離さないマブに『そういう気分なのかな…?』と思考する。

だって何を聞こうが無言であり、離れようとすれば『くびれが増えちゃう!!』と言わんばかりに締め上げら(ハグさ)れるのだから仕方ない。

 

「…おーい、サンデー?」

「……」

「サンデーさーん?」

「……」

「……はぁ、」

 

そうして、いつもの様に(かぶり)を振った後に、シルバーバレットは『ま、いっか』と身を委ねることにした。

 

「いつもご飯作るぐらいになったら、起こしてね」

 

 

あの眼差しに気づかないのは、張本人であるコイツぐらいだ。

そう思いながらサンデーサイレンスは、自分の腕の中で寝こけ始めたマブダチ-シルバーバレットを見やる。

元より、他人を煽ることが天才的だったコイツは年々ソレを悪化させていって。

今じゃ、周りの誰もがコイツの手のひらで踊らされている。

 

「……」

 

その中で一番ヤバイのが、シルバーバレットのガキ共だ。

現役引退してからはとんと表舞台に出なくなった代わりにガキ共を引き取って育てだし。

その時間の分、ガキ共はコイツに信奉じみた感情を抱いてやがる。

 

「……」

 

その感情は憧憬であり、尊敬であり、崇拝だ。

……いや、崇拝とは少し違うな。

どちらかと言えば信仰に近い。

あのガキ共にとっての『シルバーバレット』は神サマみたいなもんなんだろうよ。

 

「……」

 

だから、コイツがガキ共に『おいで』と言った時。

それまで救われたことのなかったガキ共はソレを神サマの思し召しか何かだと勘違いしたんだろうさ。

 

「……」

 

その日から、あのガキ共はシルバーバレットに絶対服従になった。

……いや、違うか。

正確には『シルバーバレットの真似』をするようになったんだ。

それはまるで宗教画に描かれた聖人のように振る舞ってみたり。

はたまた、聖人が行ったとされる奇跡を再現するかのように。

憧れているから、信じているからこそ、あの人のようになりたいと。

もしくは、あの人に失望されない自分でいるために真似をする…と。

 

「……は、」

 

……けど、まぁ。

そんなのはどうでもいいんだよ。

コイツにとって重要なのはそこじゃねぇ。

ただ、コイツがガキ共に『おいで』と言った時。

あの瞬間だけ、ガキ共の目が変わるんだ。

まるで盲信していた神が降臨したかのように目を輝かしてさ。

それはさながら、神サマに救いを求める信者のようでさ。

 

「…お前、いつか」

 

ふと、脳裏に浮かんだ情景を振り払う。

 

「ま、俺が守ってやりゃあ…」





僕:
シルバーバレット。
今日も今日とて脳焼いてるけど、一番焼いてんのが相対的にわが子たちになってしまったパパ。
でも僕自身としては「いい子だな〜」としか思ってないので…。
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