さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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約束したよ。



単純な望み

キミは、僕が欲しいと言った。

そうは言われても僕には何も返せるものなんてないので、どうしようと思った。

 

「ねえ」

「なぁに?」

「僕、キミになにも返せないと思うけれど」

 

僕はただ走るのが上手いだけのウマで、キミが望むようなものは、何も持っていない。

 

「そんなことないよ」

「でも……」

「僕はね、キミがそばに居てくれればいいんだ」

 

キミは僕の瞳を覗き込むようにして言う。

 

「キミを見ていると、僕も頑張ろうって思えるんだ。だからキミが欲しい」

 

その瞳はきらきらと輝いていて、まるで宝石のようだった。

そんな輝きに吸い込まれそうになる。

僕はその瞳を見つめ返しながら考える。

僕がそばに居ることで誰かを幸せにできるなら、それはとても素敵なことなんじゃないだろうか?

 

「……わかった」

 

こくりと頷くと、キミはとても嬉しそうな顔を見せた。

 

「じゃあ、約束だよ?」

 

差し出された小指に自分の小指を絡める。

 

「うん」

 

指切りげんまん、と僕が歌って、歌い終わったあと指を離す。

すると今度は僕の頬に手が伸びてきて、そのまま優しく撫でられた。

僕はくすぐったくて身を捩りそうになるけれど我慢する。

そしてキミは微笑みながら言った。

 

「これからよろしくね、サンデースクラッパ」

 

それが僕とキミの決め手だった。

*

 

ただ、そばに居てほしかったのだ。

星みたいなあなた。

誰も彼もに手を伸ばされ、しかし誰の手にも渡ることのない星。

誰もを魅了するけれど、誰の手にも届かない。

そんなあなたに僕はどうしようもなく惹かれていた。

だから、あなたが欲しいと思った。

あなたを手に入れることで僕は幸せになれるって。

 

「ねえ」

「なぁに?」

「僕、キミになにも返せないと思うけれど」

 

あなたは申し訳なさそうに言うけれど、そんなことはないのだ。

僕があなたを求める理由はそんなものではないのだから。

 

「そんなことないよ」

「でも……」

 

あなたは優しい人だ。

だから、僕の言葉を否定できない。

 

「僕はね、キミが居てくれるだけでいいんだよ」

 

あなたさえ居てくれればそれでいいんだ。

やさしいあなたは、気づかないまま僕の手を取った。

僕が悪魔だとも気づかずに、僕を受け入れた。

 

「わかった」

 

こくりと頷くあなたの瞳を覗き込む。

きらきらと輝くその瞳は、まるで月のようだった。

僕はその瞳に吸い込まれそうになるけれど、なんとか堪えて口を開く。

 

「じゃあ、約束だよ?」

 

差し出した小指にあなたの小指を絡める。

 

「うん」

 

指切りげんまん、とあなたが歌うのを聞きながら思う。

ああ、これであなたは僕のものだ。

 





ただ傍に居てくれるだけでいい方と、自分は何も返せないと思っている方。
何か対価が欲しいわけじゃあ、ないんだよね。
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