さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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約束したよ。



単純な望み

キミは、僕が欲しいと言った。

そうは言われても僕には何も返せるものなんてないので、どうしようと思った。

 

「ねえ」

「なぁに?」

「僕、キミになにも返せないと思うけれど」

 

僕はただ走るのが上手いだけのウマで、キミが望むようなものは、何も持っていない。

 

「そんなことないよ」

「でも……」

「僕はね、キミがそばに居てくれればいいんだ」

 

キミは僕の瞳を覗き込むようにして言う。

 

「キミを見ていると、僕も頑張ろうって思えるんだ。だからキミが欲しい」

 

その瞳はきらきらと輝いていて、まるで宝石のようだった。

そんな輝きに吸い込まれそうになる。

僕はその瞳を見つめ返しながら考える。

僕がそばに居ることで誰かを幸せにできるなら、それはとても素敵なことなんじゃないだろうか?

 

「……わかった」

 

こくりと頷くと、キミはとても嬉しそうな顔を見せた。

 

「じゃあ、約束だよ?」

 

差し出された小指に自分の小指を絡める。

 

「うん」

 

指切りげんまん、と僕が歌って、歌い終わったあと指を離す。

すると今度は僕の頬に手が伸びてきて、そのまま優しく撫でられた。

僕はくすぐったくて身を捩りそうになるけれど我慢する。

そしてキミは微笑みながら言った。

 

「これからよろしくね、サンデースクラッパ」

 

それが僕とキミの決め手だった。

 

ただ、そばに居てほしかったのだ。

星みたいなあなた。

誰も彼もに手を伸ばされ、しかし誰の手にも渡ることのない星。

誰もを魅了するけれど、誰の手にも届かない。

そんなあなたに僕はどうしようもなく惹かれていた。

だから、あなたが欲しいと思った。

あなたを手に入れることで僕は幸せになれるって。

 

「ねえ」

「なぁに?」

「僕、キミになにも返せないと思うけれど」

 

あなたは申し訳なさそうに言うけれど、そんなことはないのだ。

僕があなたを求める理由はそんなものではないのだから。

 

「そんなことないよ」

「でも……」

 

あなたは優しい人だ。

だから、僕の言葉を否定できない。

 

「僕はね、キミが居てくれるだけでいいんだよ」

 

あなたさえ居てくれればそれでいいんだ。

やさしいあなたは、気づかないまま僕の手を取った。

僕が悪魔だとも気づかずに、僕を受け入れた。

 

「わかった」

 

こくりと頷くあなたの瞳を覗き込む。

きらきらと輝くその瞳は、まるで月のようだった。

僕はその瞳に吸い込まれそうになるけれど、なんとか堪えて口を開く。

 

「じゃあ、約束だよ?」

 

差し出した小指にあなたの小指を絡める。

 

「うん」

 

指切りげんまん、とあなたが歌うのを聞きながら思う。

ああ、これであなたは僕のものだ。

 





ただ傍に居てくれるだけでいい方と、自分は何も返せないと思っている方。
何か対価が欲しいわけじゃあ、ないんだよね。
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