さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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自分の身は顧みないまま。



守られるのは、

「先輩」

 

そう言って、お前が俺の手を取ってきた時、『嗚呼、ちゃんと大人なんだ』と思った。

それを知るまでの俺から見たお前は、どうしても守るべき対象で愛すべき対象であったから。

陽だまりの中で笑っていて欲しい、そんな。

 

「先輩、あの……」

「ん」

「……いえ。やっぱり、何でもありません」

「そうか? ならいいけど」

 

だから、そんなお前が俺の手を引いてくれた時、俺は嬉しかったんだ。

俺が守らなきゃいけないと思っていたお前は、いつの間にか俺よりも前を歩いていて。

……そしてきっとこれからもそうなんだろうと思えたから。

 

 

敬愛している先輩が、よく首を突っ込むべきではないところに首を突っ込んでいると知ったのは、偶然だった。

まあ、あの悲惨な状況から助け出されたらそりゃあ想いを寄せるようになるよなと、いつまで経っても減らず、逆に増えている先輩の隠れシンパに同情するやら呆れるやら。

 

「先輩」

「ん? どした、【飛行機雲】」

「その……大丈夫ですか?」

 

先輩が首を突っ込むべきではないところというのは、すなわち危険の伴う場所である。

そんなところに行くやら帰ってきた時、先輩はいつも平然としていて、それが僕には不思議だった。

まるで、そこが僕や周りが思うほど危険ではないかのように振る舞っているように見えてしまって。

 

「……大丈夫って?」

「あ、いや……その」

 

けれど、そんな僕の心配はすぐに杞憂に()()()

先輩の反応を見ていれば分かる。

有無を言わせずに、()()()()()()()()()()()()という目。

 

「やっぱり、何でもないです」

「そうか? ……あ、そうだ。【飛行機雲】」

「はい?」

「……ありがとな」

 

先輩の目を見て、僕は悟る。

ああこの人はきっと、僕を。

この人が行くところは危険で満ち溢れていて、けれどそれを全てねじ伏せてしまうほどの()を持っているから。

だから先輩はいつも飄々としていられるし、そんな先輩に周りは惹かれていくのだろう、けど。

 

(僕も巻き込んでほしい…なんて)

 

 

きっと、お前という重りがなけりゃあ俺はどこにでも行ってしまう凧であったろう。

お前がいなけりゃあいつまでも、どこまでも進み、帰ることもできず、そうして屍にでもなっていただろう。

けれど、

 

「先輩!」

「ん、たでーま」

 

お前が家で待ってるって考えると、早く帰らねえとなあと思うので。

お前が泣くのは嫌だなと、思うので。

 

「お腹すいたろ、すぐ作る」

「ぇ、あ、先輩」

「そこで待ってろよ」

「…はい」





【銀色の激情】:
シルバアウトレイジ。
帰る場所ができたみたい。
帰る場所が出来なければきっと、あっちへフラフラこっちへフラフラ困ってる人を助けて、そのまま誰にも看取られずに死んでるタイプ。
ヒーロー気質と言えば聞こえはいいけど、滅私奉公なんだよな。
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