さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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おなかいっぱい。



満たして

「おはようサンデー」

「…おう」

 

昔の話である。

まだ互いに子どもがいなかった頃、ふたりで遊んだあとにそのまま宅飲みとなったことがあった。

結構な量作ったおつまみは(僕がすぐに酔って寝始めたのもあって)ほぼほぼサンデーの胃袋に入っていたけれど、朝になってから片された食器類などを見て、『よくあの量ひとりで食べれたなあ』と感心したものだ。

 

「おいしかった?」

「……ん」

「よかったー」

 

へらへら笑いながら、僕は彼の肩をぽんぽんと叩いた。

 

「今度は他の作るね」

「……」

 

彼は少し黙ったあと、ぼそりと呟く。

 

「……おまえって料理うまいよな」

「え? ああ……まあ、そうかな……」

「……」

 

静かなのは二日酔いにでもなって、そのせいかな?と推察するも、朝ごはんはキッチリおかわりまでして元気よく食べていらっしゃったので、違う気がする。

 

「あ、でも最近はあんまり作ってないなあ」

「そうなのか?」

「うん……ほら、僕って今大きな仕事してるじゃない? それで帰りが遅くてね……」

「……そうか」

 

彼は少し考えこむような仕草を見せてから、ぼそぼそと呟く。

 

「……俺はな。おまえより年下だけど、おまえよりは稼ぎがあると思うんだよ」

「え? ああ……そうだね……?」

「つまりだ。俺がおまえのぶん払って養えば俺は毎日このメシが食えるってコトで…」

「サンデーさん????」

 

僕は慌てて彼の口を手で塞いだ。

 

「それ以上いけない」

「……」

 

彼はしばらく黙りこんでいたが、やがて僕の手をぺろりと舐めてから、もごもごと呟いた。

 

「……おまえって料理うまいよな」

「え? ウチの母さんの方が美味しいと思うけど……」

「他のやつに食わせるなよ」

「は?」

 

いや、僕そんな暇じゃないんだけど?と言おうと思ったが、彼があまりにも真剣な目でこちらを見てくるので、何も言えなくなった。

 

それから暫くして知ったことだが。

サンデーは普段食事を多く摂ることはあまりないらしく。

けれど僕の作った料理を食べる時は、彼と彼の普段の食事量を知る人ならギョッとするほど…健啖に食べているのだとか。

 

「そんな大食いには見えないけどなあ」

「……まあ、おまえからしてみればそうかもな」

「??」

 

僕は首を傾げる。

そんな僕の様子を見て、彼は少し笑った。

 

「おまえはそれでいいよ」

「ええー?」

「俺はおまえの料理が食べたいんだ」

「いや、それは嬉しいけどさ……」

 

彼の意図するところは分からないまま、それでも僕は彼に料理を振る舞うことを止めなかったし。

彼がそれを喜んでくれたのも嬉しかった。

美味しいって言われるのは料理人冥利に尽きるしね!





SS:
マブダチ。
胃袋ガッシリいかれちゃった。
それまでは必要最低限食う…だったけど、僕の料理に出会ってからは僕の料理なら他ウマの平均量ぐらいは食うようになった。
僕の料理に出会った当初はいい感じに言いくるめて同居しようかと画策したことも…?
まあそれには僕も満更ではなかったようですが、互いの子どもができたのでねぇ。
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