さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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ふれさせて。



やわいところに、

その背中は、どことなくの焦燥と諦念をぐちゃぐちゃに混ぜ合わせたような姿をしていた。

 

「チャンプ!」

「…。なんだ、パサーか」

 

同年代と比べるとやや痩せて、小さなその体をもっと小さく見せるようなそのぐちゃぐちゃは、剥がそうと思ってもその中にある心にまでべったりと張り付いて剥がそうとしても剥がれない。

 

「併走しましょう!」

「…別のヤツとやっとけよ」

 

そして、そのぐちゃぐちゃはあなた自身の目を曇らせて。

あの鮮烈な光を、光ったあなただけが知らない。

 

「エルはチャンプが良いんデース!」

「はぁ…つったく」

 

ギラギラと燃え盛り、それでいて一瞬に。

すべてを喰い尽くし、焼き尽くしていった瞳が、今は茫洋としている。

 

「じゃあ、併走するか」

「はい!」

 

だからあなたの、そのぐちゃぐちゃを剥がしてあげたい。

あの輝きが曇らないために。

あなたが一番に輝けるように。

それが、あなたの救いになれば。

 

「チャンプはどうして学園に来ようと思ったんデスか?」

「……なんでそんなこと聞くんだよ」

「だって気になるデース!」

「……別に、大したことじゃねぇよ」

 

そんなあなたのことでも、一つだけわからないことがある。

それはあなた自身の意思だ。

たしかにあなたは宿る魂ゆえか、またはそれ以外の何かか…によって一目置かれているが、それでもあなたが学園に来た理由はわからない。

 

「エルは……チャンプがここに来るまでどんな生活をしていたのか知りたいデース」

「面白くも何ともないと思うが」

「それでも聞きたいデス!」

「はぁ……まぁ、いいけどよ」

 

あなたは少し言い淀んでから、ゆっくりと口を開いた。

 

「学園入る前に今のトレーナーに引き合わされてその流れでってだけ。以上」

 

端的だった。

ものすごく、端的だった。

しかし「これでいいだろう」と雄弁に語り、追求を避ける目に無理くり突っ込んで怒られるという趣味は持っていないので、エルコンドルパサーは素直に「そうなんデスね」とだけ返した。

ただ、それでも知りたいことはあるのだ。

 

「どうして海外遠征をしようと?」

「……別に、やりたくてやったわけじゃねぇ」

「でも……」

 

あなたは苦虫を嚙み潰したような顔をしてから、吐き捨てるように言った。

 

「成り行きだよ」

 

その一言にどれだけの重みがあるのか。

あなた自身は知らないだろうけれど。

でも、きっとそれは、あなたが一番わかっていることだろうけれど。

それでも。

 

(嗚呼)

 

エルコンドルパサーは、シルバーチャンプに魅せられてしまったので。





【銀色の王者】:
シルバーチャンプ。
比較対象が比較対象なので…な人。
基本沈んでいる。し、後ろ向き。
周りからはその実力に注目受けたり憧れられたりするけど、本人としては「それもあの人由来だな…」って思ってる、らしい。
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