さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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出逢うべくして出逢ったのかもね。



ふたり合わさり、

「あなた」

 

そう呼ぶと、あなたは照れくさそうに笑った。

そう呼んでもいい関係性になったというのに、あなたはずっと照れたままで、触れようとすればピッ!と言わんばかりに飛び上がって逃げようとするものだから、その呼び名は私たちの間では禁じ手となっていて。

 

「あなた」

 

だからそう呼ぶのは、ふたりだけの時だけになっていた。

 

「ねえ、あなた」

 

あなたは私を優しく抱きしめてくれた。

 

「愛してる」

 

私もあなたを抱きしめた。

そして私は、あなたの胸の中で目を閉じた。

 

 

『百年待っていてください』と言わずとも、何千年でも、何万年でも待つと言うのに。

 

ぼくが一目惚れしたキミは、その頃からずっと病弱だった。

血の気が引きすぎて透明感のある肌に、いつも潤んだ瞳。

触れたら崩れてしまいそうな儚さを纏ったキミは、それはそれは美しくて、ぼくは一目で恋に落ちた。

 

『ねえ、きみ』

 

だからぼくはその日から毎日キミに会いに行った。

 

『ぼくと友だちになって』

 

でも病弱なキミと、いつも傷だらけなぼくはなかなか会えなかった。

喋りかけてたのだって傍から見れば独り言としか見られないような距離からであったし、キミはいつも大人の人たちに囲まれていたし。

 

『…』

 

だから。

見つめるだけでよかったのに。

それだけで、よかったのに。

 

『ねぇ、いるのでしょう?───恥ずかしがり屋のかわいい人』

 

随分と珍しくキミがひとりで、体調も良さそうだった日。

その日もその日とて、隠れてキミを見守っていたぼくにかけられた声。

『来なさい』と言外に告げた声にフラフラと歩み寄れば、キミはぼくに優しく触れてくれた。

『はじめまして』と告げられた言葉に、ぼくはまたキミを好きになった。

 

 

ずっと、私を見ている気配があった。

その気配は、大概私の部屋が見える庭からとなっていて、せめて見晴らしのいいところをと病弱の身を慮られて日々ぼんやりと庭を眺めるしかない私を、その気配はいつも見ていた。

 

『ねぇ、いるのでしょう? ───恥ずかしがり屋のかわいい人』

 

だから私はその日、勇気をだして声をかけてみたたのだ。

『来なさい』と言外に告げた声にフラフラと歩み寄ってきた彼に私は触れた。

混凝土(コンクリート)色の髪はギシギシと、鼻付近まで長く伸びた髪から辛うじて見える顔は大小さまざまな傷に彩られていて、またその眼光は鋭いというより底なし沼に呑み込まれそう。

けれどその奥に潜む優しさを私は知っていたから、怖くはなかった。

『はじめまして』と告げた言葉に彼はビクリと身体を跳ねさせてから、恐る恐るといった様子で私に手を伸ばしてきた。

触れたら壊れてしまいそうな脆さを纏った彼が、私の身体にそっと触れてくる。

白魚(しらうお)のような指は長くて、でもその手つきは酷く優しくて。

 

「はじめまして、あなた」

 

私がそう呼ぶと、あなたは照れくさそうに笑った。

 





互いの父親が双子だからか、それともそう運命づけられていたからなのか、どことなく似ていたふたり。
儚いと脆いって何か似てる…似てなくない?
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