強い人。
『勝てる方法』とやらを聞かれて。
シルバーバレットは簡単に、シレッと答える。
「自分のやりたいことをやればいいよ」
ニコリと笑う顔には邪気も何もない。
ただそれが常識だとでも言うように、当たり前のことを語る。
「自分のやりたいことをやればいいんだよ」
「…………」
『やりたいこと』なんて……俺には無い。
そんな風に考えた事も、思った事もない。
俺はただ流されて生きてるだけだし、そんな俺が何かしたいだなんて思う訳がない。
……でも、それじゃあダメなんだ。
そんなのは分かってるけど……。
「……分からない」
「何が?」
「俺にはやりたいことなんか無いよ……」
シルバーバレットが何を言いたいのかは分かるけど、それでもそれが俺の生き方とあまりにも違っていて、視線が自然と下に下がる。
「う〜ん、まぁ。流されるのも楽だとは思うけどさ」
「…」
「そんな生き方、何が楽しいの?」
…そう言えるのは、お前が強いからだと。
心の中でひとりごちる。
俺は……そんな生き方、できない。
「流されて生きるのは楽だよ。何も考えなくても良いから」
「……」
「でも、それじゃ何も見えないよ?」
「……え?」
シルバーバレットを見ると、彼は真っ直ぐに俺を見ていた。
「『自分のやりたいこと』が分からないなら、探せば良いんだよ」
「探す……」
「そう。何が好きなのかとか、何がやりたいのかとか」
そんなの……考えたこともなかった。
ただ毎日を生きていければそれで精一杯で。
その先を考える余裕なんて、俺にはなかったから。
「……」
「まぁ、今すぐにとは言わないけど」
「……」
「『やりたいこと』が見つかれば、きっと今より楽しいよ?」
そんなの……本当に見つかるんだろうか?
でも……もし見つけられたら。
そしたら俺は……もっと強くなれるだろうか……?
シルバーバレットは俺をじっと見て、それからニコリと笑う。
「あ〜ぁ!僕もそんな『自分のやりたいこと』を探そうかな〜」
「……え?」
自分勝手して好きに生きているようなヤツなのに。
「今は色々と責任とかあるからねぇ」と、わざとらしくため息なんか吐いている。
「あ、でも。僕もうおじいちゃんだけど強いからね?『自分のやりたいこと』を見つけたら、また遊ぼうよ」
「……」
それは……どうだろう……?
シルバーバレットは強いけど……俺は強くはないから。
きっと勝負にもならないだろうし。
だからそんな機会があるとは思えないけど……。
それでも……もし本当に見つけられたら。
そんな日が来たら、その時は……。
……いや、やっぱり無いな。
そんなのは夢物語だ。
「…そう思ってるのは、キミだけなのに?」
行こうと思えば、どこにでも行けるのに。