さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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そこにあるけど。



確固として

シルバアウトレイジというウマは『大一番の申し子』と謳われるように勝つか負けるかが極端なウマだった。

勝つ時は圧倒的に勝つし、負ける時は大敗する。

がしかし。

等の本人は『重要なところは全部勝ってるんだしいいんじゃね?』という省エネ…というか、リアリストというか。

『全部全部本気でやってたら怪我するだろ』とは本人の言で。

それはそれとして。

 

「……」

 

シルバアウトレイジは前しか見据えないウマだった。

後ろなんて振り返らないし、前を見ているといっても見ているのは遠くに輝く星を見ているかのようで。

誰もシルバアウトレイジの視界には入らない。

ただ勝った負けたの記録があるだけで、シルバアウトレイジは何も気にしないから。

 

「……」

 

だから、シルバアウトレイジは誰にも止められない。

誰もついていけないから誰も追い抜けない。

 

「……」

 

孤独。

もしくはひとりぼっち。

なのにシルバアウトレイジ自身の頼り甲斐故に人にはいつも囲まれていて、誰も彼もが彼を頼る。

『シルバアウトレイジならなんとかしてくれる』

そんな無責任な信頼を勝手に寄せて、勝手に期待する。

本人はそんなつもりなんて微塵もないのに。

 

「……」

 

だから、シルバアウトレイジは誰にも止められないし、孤独だった。

 

「……先輩、」

 

そんなシルバアウトレイジに唯一寄り添えた存在は……、

 

「ん、どうした?」

 

彼の後輩である【飛行機雲】だけだった。

 

 

【飛行機雲】というウマにとって、シルバアウトレイジというウマは何とか成り立っているようにしか見えなかった。

空っぽの、虚ろな入れ物にモノを詰めて何とか自律させているような。

本人は空っぽでしかないのに、周囲からの期待だとか感謝を詰め込んで詰め込んで。

それでようやく立っているような、そんな存在に見えて仕方がなかったのだ。

 

「先輩」

 

だから、【飛行機雲】はシルバアウトレイジのことが心配でならなかった。

いつか器が割れて中身ごと壊れてしまうのではないか?と不安だった。

そんなことばかり考えていて、他のことに手がつかなくなるくらいには……シルバアウトレイジのことを想っていたから。

 

「……なんだ?」

 

だから【飛行機雲】は今日も今日とて彼のことを気にかける。

 

「いや、目の下に隈があるような気がしまして」

「…そうか?」

「なら後でそこだけメイクしましょうか」

「ん」

 

本当は隈などなくとも、この人にはどことなく陰があるのだから。

 

「先輩、」

「ん?」

「……いえ、なんでも」

 

でも、それを本人に言うのは憚られた。

シルバアウトレイジが『自分は空っぽだ』と無意識なれど、自覚していることを【飛行機雲】は知っていたから。

だから、そんな人に『貴方は空っぽなんかじゃないですよ』なんて言ったらきっと壊れてしまうだろうから。

 





【銀色の激情】:
シルバアウトレイジ。
たったひとりで立っている。
崩れているとも、しれぬままに。
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