さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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互いに焼いてる。



あの日、キミは光だった

「僕のモノになって」

 

そう初対面で告げられた言葉は、騒がしい声援に巻き込まれて当事者である僕ら以外には誰も聞こえない言葉で。

真剣な顔で、しっかと手を握られて。

それは傍から見れば「次は勝つ」とかそんな、ティーンらしい、もしくは競技者らしい姿だったろうか。

 

「は?」

 

しかし、僕が返せた言葉はそんな面白みもクソもない困惑の単音であって。

なにせ、あの時の僕にとっちゃあキミは初対面のゴリゴリに体格のいい他人であるのだ。

 

「キミがほしい」

 

しかし、そんな僕の困惑などお構いなく。

キミは再度、真剣な顔でそう言ったのだ。

 

「……え?」

 

だから僕は、もう一度そう返した。

そんな出会いから早数年。

僕らは切磋琢磨し合う関係であり、自他ともに認める親友の関係になった。

そして、その過程で僕はキミの人となりを知った。

まず第一に、キミは非常にストイックであるということ。

それは練習でも本番でも同じで、はじめはキミを悪く言う人もその姿を見れば口を噤んでしまうほどに。

その次に、キミは非常に強欲であるということ。

それは家でも外でも同じで、少々困らせられたり…。

そして最後に、キミは諦めが悪いということ。

これはまあちょっと意外だったのだけれど、キミは僕や周りが思うよりもずっと負けず嫌いであったらしい。

「もうやめた」と一度言ったのに、それでもなお僕に挑み続け、敗北を重ねても決して諦めることをしなかったのだから。

まあ、そんなキミのストイックさや強欲さは、僕を大いに助けた。

なにせ僕は天才ではなかったから。

才能に恵まれたキミが僕の視界に現れてからはなおのこと実感したのだけれど……僕は努力する凡才であったから。

そんな僕だからこそ、キミのストイックさに何度も救われたし、その貪欲なまでの強者への渇望には幾度となく負けを覚悟させられたものだ。

そしてなによりも……僕が挫けそうになった時、キミは僕の手を取って立ち上がらせるものだから。

キミが、僕にそうしてくれるものだから。

僕は何度でも立ち上がれた。

そんなキミに……僕も。

 

「おはよう」

「…、おはよう」

 

懐かしい夢を見て。

先に起きて僕の頭を撫でていたらしいキミにおはようの挨拶をする。

そうすると同じように挨拶が返ってくるのにクスクスと笑う。

…ホント、いくら機嫌が悪くてもこうやってするだけで機嫌が直る子だから楽なのか何なのか。

でも、

 

(怒ったら結構長引くんだよなあ)

 

機嫌は直るけどその一瞬なんだよね。

根に持つタイプというか、なんというか。

……まあ、そんなところも可愛いのだけれど。

 

「おはよう」

 

そう言ってキミの頭を撫でると、キミはくすぐったそうに笑って僕の手に擦り寄った。

そんなキミにまた小さく笑う。

 

「……ふふ」

「?」

 

不思議そうに首を傾げるキミに何でもないよと笑う。

 

(ああ、幸せだなあ)

 

こんな穏やかな朝が毎日続けばいいなあと思いながら、僕は愛しいヒトを抱きしめたのだった。

 





この二人、お互いを見て「自分には才能がない」って思ってそうなところが周りにとっちゃあ救いがねぇなって。
周りのこと、踏み潰してるのにね。
でも、二人は踊っているだけで地面なんて見ないので。
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