似ている。
「こんにちは、おじさま」
そう言って、微笑みながら会釈する青年はいつかの
色合いこそ芦毛であるからグラデーションがかかったようになっているが、その顔立ちは瓜二つ。
「あ、ああ……こんにちは」
そう返事するだけで精一杯であった。
「あれ?おじさま、どうかしました?」
「い、いや……なんでもないよ」
青年は不思議そうに首を傾げるが、彼はそれどころではない。
(嗚呼、我ながら)
彼は動揺を悟られないよう必死に心を落ち着かせながら、青年と対峙する。
そんな彼の心境など知る由もなく、青年は朗らかに笑う。
「ふふ……おじさまはお忙しい方ですから、こうしてお会いできて嬉しいです」
「そ、そうか……」
その笑顔は年相応のあどけなさと愛らしさが同居したものだった。
彼は思わずドキッとしてしまう。
(いけないな……)
彼は青年の笑顔に見惚れそうになりつつも、なんとか平静を装う。
「それで、今日は一体どうしたんだ?」
「はい。実は…」
青年をこの家に置くにあたって、青年の素性諸々を調べあげた。
競走成績こそ問題はなかったが、もしかすると…ということも無きにしも非ず。
そして、彼は確信したのだ。
この青年はいずれ世界を席巻する逸材だと。
(だが……)
同時に彼は不安に思ったのだ。
果たしてこのまま彼をここに置いても良いのだろうかと。
彼の見立てでは、青年の能力なら世界でも十分に通用するはずだ。
だから青年がどうしてこの場所に居続けるのか、彼には理解できなかった。
行こうと思えば、何処へだって行けるのに。
───
それが醜い嫉妬だと言われればそうとしか言いようがないが、彼はそれを無視することは出来なかった。
しかし、青年はそのことについては語ろうとしない。
ただ、こうして時折彼と会って話をするだけ。
(…)
彼が考え込んでいると、青年が口を開く。
「あの……おじさま?」
「あ、ああ……すまない」
どうやら深く考え込み過ぎていたようだ。
彼は慌てて謝罪すると、話題を変えることにした。
「……そういえば、あの子はどうしたんだ?いつも一緒にいるだろう」
「あ、あ〜…」
「?」
妙に歯切れが悪い。
そのことに首を傾げれば、
「やっとみつけた」
「ヒエッ!」
伸びてきた腕が青年を絡めとる。
絡めとった腕の持ち主は若き日の彼によく似た見目でジイと彼を睨みつけて…。
「えへ、バレちゃった」
「バレちゃったじゃないよ。…まったく」
いつかの夢幻のようなソレを、少し羨む。