さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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心配しないで。



不安症

何でこんなに怒っているのだろうと、同居人を見ながら思う。

僕はいつも通り日課のトレーニングをしに行っただけなのに。

トレーニングを終えて家に帰ってくると怒髪天をついたというような同居人が僕を出迎えたのだ。

 

「おなか空いてるの?すぐ作るけど…」

 

そう告げると「食べる」と言いながらも声は低いし顔も怒ったまま。

はて?僕は何をしたかしらと頭を捻る。

 

「ご飯、何食べたい?」

「……チャーハン」

「わかった」

 

同居人のリクエストに応えようと冷蔵庫を開けると、そこには卵がなかった。

そういえば昨日使い切ってしまったのだったなと思い出す。

 

「ごめん、買い物行かないとないや。すぐ帰ってくるから待ってて!」

 

そう告げながらエプロンを脱ぐ。

すると同居人はキッチンまで来て僕の隣に立つ。

 

「……着いて行く」

 

なんてことを言ってきて驚いた。

珍しいこともあるもんだ。

 

「すぐ帰ってくるよ?」

「いい」

「……そう?じゃあ、一緒に行こうか」

 

同居人を連れて近くのスーパーまで歩く。

道中は会話もなく、少し気まずかった。

 

「そういえば夜、何食べたい?」

「なんでもいい」

「それが一番困るんだけど……」

 

くだらないやり取りをしつつ買い物を済ませる。

帰り道、ふと気になって聞いてみた。

 

「なんで今日は着いてきてくれたの?」

 

すると同居人は立ち止まって僕を見る。

そして一言だけ言った。

 

「……心配だから」

 

 

あの子を手に入れたあとも、悪夢を見る。

…いや、手に入れたからこそ、か。

笑顔のあの子が、どれだけ手を伸ばしても去っていってしまう夢。

「置いていかないで」と手を伸ばしても、「行かないで」と泣きすがっても、あの子はこっちを見なくて。

そうしてやっと、あの子は最後に「ごめんね」とだけ言って消えてしまう。

そんな夢だ。

……いや、本当にただの夢なのか?

最近ふと考えてしまうことがある。

あの子がいなくなる日が来るのではないかと。

根拠はないけれど、そんな予感がしてならなかった。

 

 

今日も「置いていかないで」と言う同居人を連れてスーパーまで歩く。

すると同居人が足を止めたので僕も立ち止まった。

「どうしたの?」と声をかけると同居人は言う。

「自分が死んだら、お前はどうする?」と。

そんなの決まってる。

 

「一生独り身でいるけど?」

 

なに当然のことを聞いてくるんだコイツ。

そう首を傾げれば、聞いてきた当の本人は本当に驚いた顔をしていて、思わず笑えてきてしまう。

 

「聞いたのはキミの方だろ?」

「いや、」

「僕の愛を舐めるなよ、なあ?」





お互いにお互い。
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